家計と住まいを見直して、年齢を重ねても暮らしやすく──適切なサイズの暮らしを実現するために、今からできること
撮影・松村隆史 イラストレーション・波田佳子 文・黒澤 彩
家計と住まいを見直す
老後の家計を考えて住環境を検討したい
「老後、もっとも大きなお金が動くのが住まい関係です」と井戸美枝さん。自身も一軒家から賃貸マンション、分譲マンションへと2度の住み替えを経験している。
「賃貸で、ずっと家賃を払っていける計算でしたが、お金が減り続けることは精神的に堪えました。目の前の坂道で夫が転んで骨折したことも想定外。最初の住み替えの失敗は勉強代と思っています」
健康寿命も念頭に置きながら、住まいのコストを考えてみよう。
Q コンパクトな家のメリットは?
A 物を減らせて、光熱費も削減。生活をスリムにできる。
家が大きければ、それだけ持ち物も多くなりがち。大きな家から小さな家への住み替えでは、強制的に物量を減らせることが大きなメリットになる。
もちろん光熱費も減る。井戸さんのケースでは、山の中腹に立つ一軒家から街中のマンションへ移ったことで暖房代がおのずと節約でき、光熱費全体で見るとほぼ半額に減ったそう。また、以前は2台所有していた車を1台にし、将来的にはそれも手放す予定。駐車場が有料になったことで、車の必要性自体を見直すことができた。
「住まいをコンパクトにするには減築リフォームや建て替えという選択肢もありますが、建築費が年年高くなっています。コストの面では住み替えが有利になるケースが多いのではないでしょうか」
Q 住み替えにいくらまで使える?
A 介護と医療のため世帯で1000万円は預貯金で持っておきたい。
理想の住まいにお金をかけすぎて、老後資金を使い込んでしまうのは避けたいところ。
「介護費+医療費の平均額データでは1人1000万円弱ですが、世帯で1000万円ほど預貯金でとっておくといいでしょう。老後は年金で足りない生活費+1000万円が必要と考えると、リフォームなど住まいにかけられる金額はそれほど大きくはないはず」
高齢期の住まいの計画では、その家に何年住むのか? 要介護になったら、どこでどんな介護を受けたいのか? という先々の生活までイメージするのがポイント。
「100歳まで生きるとして、“あと何年”と逆算してみましょう。そこに住む期間に応じた費用対効果を考えると、どのくらいお金をかけてもいいか判断できます」
Q 住み替える場合、どんな家を選ぶ?
A 人がいる場所に住むべし。戸建ては修繕費が高額に。
年金をベースに生活する中で、一度に多額のお金を使うことはできるだけ避けたいと思うと、一戸建ては負担が大きい。
「とくに屋根や外装の修繕費が高いのですが、マンションならその部分は月々の修繕積立金から賄えます。戸建ての場合、修繕費を自分で貯めておく必要があります」
また、高齢になるほど家の立地も重要で、スーパーや病院が近く、車なしでも生活できるところを選びたい。井戸さんは将来、在宅での介護を希望しているので、訪問介護をしてくれる施設が近隣にあることも今の住まいの決め手になったという。
「よく、海辺や緑豊かな山に住みたいという人がいますが、誰も来てくれないようなところに住むのはリスキーだと私は思います」
『クロワッサン』1167号より
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