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【新連載】酒徒のまんぷく中国まるかじり vol.3──新緑の上海、筍で味わう春

中国料理愛好家・酒徒さんの上海暮らしでみつけた美味とおうちで作れる小さなレシピ。

イラストレーション・小野寺光子

【新連載】酒徒のまんぷく中国まるかじり vol.3──新緑の上海、筍で味わう春

桜が散ったかと思ったら、旧フランス租界のプラタナス並木が芽吹き始めた。十九世紀のフランス統治時代に街路樹として持ち込まれ、今ではこの一帯を象徴する風景となっている。ひとたび芽吹き始めると早く、数度の雨で葉は青青と茂り、街は一気に緑に覆われる。ベランダからの眺めも気づけば緑一色で、青空との対比が鮮やかだ。快晴の春は一年で最も過ごしやすく、上海で好きな季節のひとつ。週末のそぞろ歩きも足取りが軽くなる。

そんな春の上海で、忘れてはならないのが筍である。春に出回るものは春筍(チュンスン)と呼ばれ、冬に土中から掘り出される冬筍(ドンスン)とは区別される。上海の市場に並ぶ春筍は、新鮮なものほどえぐみが穏やかで、下ゆでも十分ほどで済む。皮をむいてそのまま料理に使えるものもあり、この気軽さもあって、つい手が伸びる。

筍料理として真っ先に思い浮かぶのが、醃篤鮮(イエンドゥシエン:上海語ではイドシ)。難解な名だが、「醃」は塩漬け、「篤」はとろ火で煮込む、「鮮」は生肉を指す。つまり、鹹肉(シエンロウ)という塩漬け肉と豚三枚肉を煮込んだスープだ。主役の筍は料理名に含まれていないが、実際には欠かせない存在である。

旧フランス租界を眼下に望む。プラタナス並木の向こうに摩天楼と青空
旧フランス租界を眼下に望む。プラタナス並木の向こうに摩天楼と青空
市場で買ってきた春筍。すぐ使うときは、店に頼めば皮をむいてくれる
市場で買ってきた春筍。すぐ使うときは、店に頼めば皮をむいてくれる
上海の春を代表する味、醃篤鮮。土鍋の蓋を開けると、筍と鹹肉の香りがふわりと立つ
上海の春を代表する味、醃篤鮮。土鍋の蓋を開けると、筍と鹹肉の香りがふわりと立つ
旧フランス租界を眼下に望む。プラタナス並木の向こうに摩天楼と青空
市場で買ってきた春筍。すぐ使うときは、店に頼めば皮をむいてくれる
上海の春を代表する味、醃篤鮮。土鍋の蓋を開けると、筍と鹹肉の香りがふわりと立つ

長時間煮込まれて白濁したスープには、筍の香りと二種の肉の旨味が溶け合う。余計な味付けはせず、その重なりを味わうのみ。ひと口すすれば、頬がゆるむ。歯切れのよい筍には春の気配が宿り、脂がほどよく抜けた豚三枚肉は柔らかく、しみじみと旨い。鹹肉をかじれば、凝縮された塩気と旨味が広がる。静かだが確かな、滋味という言葉がよく似合う一皿である。

鹹肉は、豚三枚肉に塩をして干すだけの素朴な保存食だ。旧暦の十二月が仕込み時で、この冬は私もベランダで肉を干し、春のイドシに思いを馳せていた。炒め物や蒸し物、煮込みなどにも使える万能選手だが、結局、これを食べたいがために干しているのかもしれない。

日本では鹹肉を手に入れにくいので、今回は筍と豚三枚肉で作れる一皿を紹介しよう。

春筍焼肉

【新連載】酒徒のまんぷく中国まるかじり vol.3──新緑の上海、筍で味わう春

chūnsǔn shāo ròu(豚三枚肉と筍の醤油煮)
筍と肉の旨味に甘辛醤油味がからみ酒もご飯も進む

【材料】
豚三枚肉…600g
筍(下処理済みか水煮)…300g
氷砂糖(砂糖でも可)…40g
油…大さじ2
白葱…1本
生姜…2かけ
A[醤油…大さじ2、紹興酒…大さじ2

【作り方】
豚肉は4~5cm角に切る。筍はひと口大の乱切り、白葱は4cm長さのぶつ切り、生姜は薄切りに。鍋に油と氷砂糖を入れて弱中火でかきまぜながら加熱し、泡が立ったら豚肉を入れて全体に色をつける。強火にして白葱と生姜を加えて炒め、Aとひたひたの湯を注いで蓋をし、弱中火で30分煮込む。筍を加えてさらに10分、蓋を取って強火で汁気を飛ばし、とろみを出して仕上げる。

【新連載】酒徒のまんぷく中国まるかじり vol.3──新緑の上海、筍で味わう春
  • 酒徒 さん (しゅと)

    中華料理愛好家

    北京・広州・上海に暮らす。著書に本場中華料理のレシピ本『あたらしい家中華』『中華満腹大航海』がある。

『クロワッサン』1167号より

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