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『出光真子 おんなのさくひん──ある映像作家の自伝』東京都写真美術館──女性映像作家の半世紀以上の活動をたどる

青野尚子のアート散歩。今回は実験映画やビデオアートを手がけた女性アーティストの回顧展『出光真子 おんなのさくひん──ある映像作家の自伝』。出光は1940年生まれ。初期のハイコントラスト・フィルムによる作品は子育てに追われてフィルムを買いにいくこともままならず、家にあった機材を使って撮影したものだ。

文・青野尚子

出光真子 《Real? Motherhood》2000年 東京都写真美術館蔵 ©Mako Idemitsu
出光真子 《Real? Motherhood》2000年 東京都写真美術館蔵 ©Mako Idemitsu

今ではスマホで簡単に動画を撮ることができるけれど、以前は映像制作は限られた人々のものだった。そんな時代に実験映画やビデオアートを手がけた女性アーティストがいる。『出光真子 おんなのさくひん──ある映像作家の自伝』は出光真子の活動の全貌を振り返る回顧展。展示と映像の上映で、初期から近作までを振り返る。

出光は1940年生まれ。大学卒業後ニューヨークに留学し、アメリカの抽象画家サム・フランシスと結婚する。が、二児の母として家庭を守ることに飽き足らず、映像作家への道を歩むことになった。

彼女が結婚した1965年はアメリカで女性解放運動が活発化したころだ。出光の作品にも妻・母であることとアーティストとしての自己との間の葛藤がにじみ出る。初期のハイコントラスト・フィルムによる作品は子育てに追われてフィルムを買いにいくこともままならず、家にあった機材を使って撮影したものだ。映像作品《英雄ちゃん、ママよ》では息子に執着し、子の自立を阻むような母の姿を描く。芸術家カップルの葛藤を描く《加恵、女の子でしょ!》には家事と夫のアシスタント的な役割に追われる、作者の境遇を投影したかのような女性が登場する。

出光真子 《英雄ちゃん、ママよ》 1983年 東京都写真美術館蔵 ©Mako Idemitsu
出光真子 《英雄ちゃん、ママよ》 1983年 東京都写真美術館蔵 ©Mako Idemitsu

出光が制作を始めてから半世紀以上、ジェンダーをめぐる状況は変わってはきたけれど、彼女の作品に共感を覚える人も多いだろう。なかなか解決することのない問題について、改めて考えさせられる。

『出光真子 おんなのさくひん──ある映像作家の自伝』

『出光真子 おんなのさくひん──ある映像作家の自伝』東京都写真美術館──女性映像作家の半世紀以上の活動をたどる

東京都写真美術館 6月18日(木)~9月21日(月・祝)

展示作品は一部を除き東京都写真美術館のコレクション。インスタレーションなどの展示のほか、1階ホールで40点の作品を9つのプログラムで上映。

東京都写真美術館(東京都目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内) TEL:03-3280-0099 10時~18時(木・金曜は〜20時)月曜休(祝日の場合は開館、翌平日休館) 入館料一般700円ほか
  • 青野尚子 さん (あおの・なおこ)

    アート・建築関係のライター

    著書に『超絶技巧の西洋美術史』(池上英洋さんとの共著、新星出版社)など。

『クロワッサン』1167号より

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