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『総合開館30周年記念 ルイジ・ギッリ 終わらない風景』東京都写真美術館──世界を見るための地図としてのギッリの写真

青野尚子のアート散歩。今回は、東京都写真美術館30周年記念で開かれる、イタリアの写真家、ルイジ・ギッリのアジアの美術館初の個展『ルイジ・ギッリ 終わらない風景』。

文・青野尚子

《ボローニャ、1989-90》〈ジョルジョ・モランディのアトリエ〉より 1989-90年 東京都写真美術館蔵 (c)Heirs of Luigi Ghirri
《ボローニャ、1989-90》〈ジョルジョ・モランディのアトリエ〉より 1989-90年 東京都写真美術館蔵 (c)Heirs of Luigi Ghirri

ありふれた光景のように見えて、その人にしか撮れない写真。イタリアの写真家、ルイジ・ギッリ(1943〜1992)の作品には独特の光と空間がある。『ルイジ・ギッリ 終わらない風景』展はアジアの美術館では初めての個展になる。東京都写真美術館の総合開館30周年を記念して開かれるものだ。

ルイジ・ギッリは測量技師として働いていたがコンセプチュアル・アーティストたちとの出会いを経て70年代から本格的に写真の撮影を始める。彼が30歳になった頃のことだ。結果的に写真家としての彼のキャリアはわずか20年ほどだった。

その短い期間に彼は生まれ育ったイタリア北部の都市レッジョ・エミリアや旅先の風景、画家のジョルジョ・モランディや建築家アルド・ロッシのアトリエ、窓や鏡に映る風景などを撮影する。それは単なる現実世界のコピーではなく、「見られた」視覚的断片によって風景を作り出す試みだった。

《ザルツブルク、1977》〈F11、1/125、自然光〉より 1977年 (c)Heirs of Luigi Ghirri
《ザルツブルク、1977》〈F11、1/125、自然光〉より 1977年 (c)Heirs of Luigi Ghirri

また彼は1970年代に妻パオラ・ボルゴンゾーニとともに出版社をたちあげる。この展覧会ではグラフィック・デザイナーだったパオラの仕事とともにギッリの写真に対する多角的な思索のあとをたどる。

ルイジ・ギッリは、「私は写真を作りたかったのではなく、写真であると同時に地図や設計図を作りたかったのです」という言葉を残している。彼の“地図”を手がかりに世界を旅してみたい、そんな気持ちになる。

『総合開館30周年記念 ルイジ・ギッリ 終わらない風景』

東京都写真美術館 7月3日(木)~9月28日(日)

ドキュメンタリー映画『Infinito』の上映も(7月18日、8月24日、9月12日、当日10時から整理券配布)。

東京都写真美術館(東京都目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内)  TEL:03-3280-0099 10時〜18時(木・金曜〜20時、8月14日〜9月26日の木・金曜は〜21時) 月曜休(祝休日の場合開館、翌平日休)観覧料一般800円ほか
《モデナ、1978》〈静物〉より 1978年 (c)Heirs of Luigi Ghirri
《モデナ、1978》〈静物〉より 1978年 (c)Heirs of Luigi Ghirri
  • 青野尚子 さん (あおの・なおこ)

    アート・建築関係のライター

    著書に『超絶技巧の西洋美術史』(池上英洋さんとの共著、新星出版社)など。

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