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作家・川奈まり子さんの着物の時間──衣紋の抜き加減が重要。ここが決まると着姿が美しく見えます

今回の「着物の時間」は、フリーライターを経て、2011年長編官能小説で作家デビュー、2014年ホラー短編&怪談集『赤い地獄』を上梓以来、怪異体験者への丹念な取材をもとにした実話系怪談が人気の作家・川奈まり子さん。

撮影・黒川ひろみ ヘア&メイク・桂木紗都美 文・大澤はつ江 撮影協力・リンゴセイカ

江戸小紋は無地感覚で着られ、帯で変化がつくので重宝する一枚です

川奈まり子(かわな・まりこ)さん 作家。東京都八王子市出身。フリーライターを経て、2011年長編官能小説で作家デビュー。2014年ホラー短編&怪談集『赤い地獄』を上梓。以来、怪異体験者への丹念な取材をもとにした実話系怪談が人気。日本推理作家協会会員。怪異怪談研究会会員。著書に『最恐物件集 家怪』『東京をんな語り』『告白怪談 そこにいる。』など多数
川奈まり子(かわな・まりこ)さん 作家。東京都八王子市出身。フリーライターを経て、2011年長編官能小説で作家デビュー。2014年ホラー短編&怪談集『赤い地獄』を上梓。以来、怪異体験者への丹念な取材をもとにした実話系怪談が人気。日本推理作家協会会員。怪異怪談研究会会員。著書に『最恐物件集 家怪』『東京をんな語り』『告白怪談 そこにいる。』など多数

この世には常識では考えられない不思議なことが起こり、それらは超常現象、怪奇現象と呼ばれている。作家の川奈まり子さんは長年、怪異な体験をした人々にインタビューを行い、集めた体験談は6000件以上にものぼる。

「昔から語り継がれている言い伝えを実際に体験した人、夢で見たことが現実に起こった人、この世のものではない=幽霊と遭遇した人など千差万別。心の奥底に押し込めていた体験をやっと話せた、とおっしゃる方も多いです。聞き手である私が怖い話を肯定することで、体験した方の心を少しでも解放できたら、といつも思っています」

近年はそれらの体験談を小説にするだけでなく、怪談師としても活躍する川奈さん。

「着物を着て週に3~4日は怪談を語り、怪奇体験者へのインタビューも行います。着物は仕事着といえるかもしれません。着用するのは黒地やグレーなどのモノトーン系がほとんどです。ピンクや水色などの淡いものでは語りの内容とアンバランスですよね(笑)」

「琵琶を入れた袋の色合いが美しく、白蛇もかわいい顔で親しみが持てます。運気がアップすることを願って」
「琵琶を入れた袋の色合いが美しく、白蛇もかわいい顔で親しみが持てます。運気がアップすることを願って」

そんな川奈さんが今回選んだのは、金茶色の鮫江戸小紋。合わせた黒地の帯が全体をキリッと引き締める。

「江戸小紋は無地感覚で着られ、帯で変化をつけられるので大好きです。今日は黒地に葛飾北斎の『琵琶に白蛇図』を染めつけた『ゴフクヤサン ドットコム』の名古屋帯で、江戸前の小粋さを演出してみました。帯留めも柄に合わせて白蛇です。琵琶は芸能と財運の神様・弁財天の持ち物で、白蛇はその使いといわれています。北斎はさらなる高みを目指し、願いを込めて描いたとも。私も芸の上達と運気のアップにあやかりたいと思い愛用しています」

川奈さんが着物に親しむようになったのは祖母の影響が大きい。

「祖母は和裁士でしたから、家には反物がたくさんありました。祖母が着物を着て仕事をしていた姿を覚えています。ゆったりと着ているのですが、どんなに動いても着崩れた感じが全くしないんです。着付けも手ばやくて、帯を締めながら廊下を歩く姿を目撃したこともあります。今思えば、どうやって帯を締めたんだろう? たぶん、楽で着崩れない着付けの工夫がたくさんあったのだと思います」

その祖母に着付けの手ほどきを受けた川奈さん。今回も自身の着付けで撮影に臨んでくれた。

「事細かに教えてもらったわけではありません。見て覚えた、といった感じです。祖母もそうでしたが、私も補正はしません。心がけていることを挙げるなら、衣紋の抜き加減を大切にしています。抜き過ぎるとプロっぽくなってしまいますし、ツメ過ぎると苦しそう。美しく見える抜き加減になるように日々、研究中です」

「ポーセラーツ作家のなかむらあやさんの『ポルト』に特注した、怖くない人魂柄の帯留めとピアス」
「ポーセラーツ作家のなかむらあやさんの『ポルト』に特注した、怖くない人魂柄の帯留めとピアス」

ここがスッキリすると、着姿がきれいに見えるので重要なポイントだそう。

「祖母が残した長襦袢を見ると、衣紋を抜くための三角ゴムと紐が縫いつけられていました。そうか、これがきれいな衣紋を保つ工夫なのだと納得しました」

川奈さんにとって着物とは、自身のルーツを思い起こしてくれるものだという。

「私の中には自由でいたい、縛られたくない、といった根無し草的な考え方があり、帰属する場所はないと思っていました。でも着物に接するようになり、子どものころ祖母の膝の上で運針を教えてもらったことや畳み方を習い、祖母から仕立て上がった浴衣を手渡され、畳む手伝いをしたことなどを思い出しました。風来坊の根無し草だと思っていたのに、帰るべき場所があると気がついたんです。着物は家族との思い出と、元いた場所に繋ぎ留めてくれるアンカーの役割を担ってくれるものなのかもしれません」

『クロワッサン』1156号より

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