【演目:文七元結】大団円で締めくくる落語の名作!素敵な落語日和をお過ごしください。│ 柳家三三「きょうも落語日和」
イラストレーション・勝田 文
【演目】文七元結(ぶんしちもっとい)
あらすじ
左官の長兵衛は仕事の腕は抜群だが、博打で五十両の借金を抱えたうえ、年の瀬に娘・お久が行方知れずで女房と途方に暮れている。
そこへ出入り先の吉原の大見世・佐野槌(さのづち)から「お久が来ている」と知らせを受けて長兵衛が出向くと、佐野槌の女将が「お久が父の借金を返すために、身を売って女郎になると言ってきた」と告げ、長兵衛に改心を説く。
心を入れ替えると誓った長兵衛「来年の大晦日までに金を返せないときは娘を女郎にする」という約束で借金返済のための五十両を都合してもらう。
帰り道に吾妻橋で身投げしようとする若者を助けると「掏摸に奉公する店の金五十両を盗られ、死んで詫びる」という。自分の懐に金がある長兵衛の決断は…。
名人・三遊亭圓朝の作と伝わる名作人情噺です。
貧乏の極みで、しかも年末の切羽詰まった空気感に、娘が身を売ってまで用立ててくれた大金を見ず知らずの者にやるべきか否か…。波瀾に満ちた展開と幸福な結末は、物語を知っている人でも手に汗握って聞いてしまうそうですし、演者も高い技量を求められます。
落語家にとって「伝家の宝刀」ともいえる一席なので、お客さまと「よかったね」と気持ちをひとつにして大団円で締めくくりたいと思うのは私だけではないはずです。
さて、この連載も今回で大団円。皆様に厚くお礼申し上げます。これからも大勢のかたが寄席や落語会で素敵な落語日和を体験できるように祈っています。
『クロワッサン』1094号より