古い胆汁酸を排出するために、腸もみで便秘を解消しましょう。
撮影・岩本慶三 文・韮澤恵理 モデル・くらさわかずえ スタイリング・高島聖子 ヘアメイク・武田尚子(メランジ)
外から刺激して腸の動きを助けたい。
便秘になると腸内環境が悪化し、滞留した便から毒素が再吸収されるなどのデメリットがあります。
「なにより胆汁酸がきちんと排出できないことが大きな問題点です。大腸内に留まっているうちに古い胆汁酸として再吸収されるだけでなく、腸内の悪玉菌が有害物質に分解し、大腸がんなどの原因にもなります」
と、渡辺さん。便秘はダイエットだけではなく健康の大敵です。
「食べ物が小腸から大腸へと移動して、気持ちよく排出されるのは、腸の細かな動きで便を押し出しているからです」
これが腸の蠕動運動。腸の中にはひだがたくさんあり、小腸側が収縮し、大腸側が弛緩するときに便を前に押し出します。この運動がしっかりできていることが大切。
「運動不足や加齢によって腸の動きも衰えます。便を押し出す力が弱くなり、どこかで詰まってしまうのが便秘の大きな原因です」
乳酸菌やビフィズス菌を含む食品を食べたり、便秘薬に頼っている人も多いようですが、「外から腸の動きを助ける腸もみやストレッチが案外、効果的です」。
腸の流れに沿って外から少し手助けすると、これをきっかけに腸が動き出すことが多いのです。
「ほかにも腹式呼吸で腸を動かしたり、圧力を変えたりするのもいい方法です。思いついたときに腸をさするだけでも違いますよ」
(こんなタイミングで習慣に!)
◎毎日必ず続けたい。
大腸もみ → 小腸もみ
◎ウォーミングアップに。
腹式呼吸 → 逆腹式呼吸
◎朝晩ふとんの上で。
ひざ抱え腸ストレッチ → ひざ倒し腸ストレッチ
◎気づいたらちょいさすり。
大腸さすり → 小腸さすり
※詳しいやり方は後述
腸の構造と働きで刺激ポイントがわかる。
「腸の構造がどんなふうになっているのかご存じですか?」
胃である程度消化された食物は十二指腸で胆汁と混ざり、小腸でさらに消化され、栄養素として小腸の壁から吸収されると、肝臓に運ばれた成分は全身に送られます。小腸の最後、回腸のあたりから、今度は腸壁から水分が吸収され、次第に塊になり、便として肛門へ向かって進んでいきます。
「この便の移動を行っているのが、先ほどの腸の蠕動運動なのですね。下の図のように、十二指腸から回腸までは、比較的上から下への流れですが、回腸から先は今度は下から上への移動になり、右から左へと横移動し、S状結腸へと下りていきます」
(腸の構造をちゃんと知る)
小腸と大腸の位置を知っていますか?
腸内の流れを知れば、もむべき場所がわかります。
●十二指腸
胆管から胆汁が分泌される。
●小腸
胃で消化された食物をさらに消化しながら栄養を吸収する。
●回腸
小腸の終点、このあたりから胆汁が再吸収される。
●S字結腸
大腸の最後はS字状のカーブを描いている。
●大腸
食物の残りかすから水分を吸収し、便として排出。腸内細菌のほとんどがここに。
腸もみや腸さすりを行う際のポイントは、腸内で食物や便が移動する流れを意識して行うことだそう。腸のひだには逆流を防ぐ機能がありますから、進行方向への移動を助ける気持ちで。
「もう一つのポイントは、大腸には4つのコーナーがあり、ここが便の溜まりがちな場所。特にS状結腸は大きく曲がり、便の水分も少なくなっているので、最も滞りやすい部位です。このポイントを押すだけで、腸が動き出すことも。古い胆汁酸を捨て去るためには大腸もみが第一選択肢です」
「便秘とは直接関係ないようですが、小腸にはたくさんのリンパ腺があり、免疫機能もここに集中しています。リンパ液の流れをよくし、老廃物を流し出せば、消化や吸収もスムーズに行われるようになり、免疫力もアップします」
東洋医学ではへその下3cmの位置に丹田というツボがありますが、これがまさに小腸の位置。全身のエネルギーが集中するツボで、気持ちを落ち着けたり、バランスを整えることが知られています。
腸の調子がいいときは、お腹はほんわりと温かいもの。ところが、便秘の人はもちろん、下痢や消化不良の人のお腹は冷たいのです。これはお腹の血行不良が一因です。
「腸をさするだけでも、手を当ててお腹の様子を感じることにつながります。静かにさすってお腹の血流が良くなれば、内臓が活性化し、腸の動きも良くなるはず」