「ベランダはガーデニング実験室」、フリーアナウンサーの住吉美紀さんの緑を愛でる喜び。
東京のマンションで緑のサンクチュアリを育む住吉美紀さんに取材しました。
撮影・黒川ひろみ 文・一澤ひらり
芽が出た! 双葉になった! 可愛らしさに、毎朝ワクワク。
コロナ禍がきっかけ。ステイホームでベランダの植物を育てる楽しさに目覚めた、というのは住吉美紀さん。
「土に触って植え替えとか剪定とかしていると、あっという間に時間が経ってしまって心和むことに気づいたんです。私は小学生時代、自然豊かな北米のシアトルで過ごしたので、花や緑が大好きでした。でも働き出してからは多忙で、買ってきた植物を枯らすようなことをしていたんですね。それが家に籠る生活になって、緑を増やす楽しみにどんどんハマっていきました」
日本で未知の感染症が深刻な問題になってきたのは3年前の春先ごろ。と同時にこの時季は、植物を植えて育て始めるには最適のタイミングで、ガーデニングを始めたら一気に緑の数が増えたそう。
折しも夫の経営するレストランがオープンし、開店祝いに贈られた山野草の寄せ植えやハーブなども加わり、手をかけながら多種多様な植物の成長を見守るのが一層大きな楽しみになった。
「うちに来た子たちがベランダで毎日すくすく育っていくのがすごくうれしくて。昨日より葉がグンと伸びてるとか、蕾が開いてきたとか、その成長ぶりに目をみはるばかり。今年も5月から梅雨時にかけて種を植えたり、挿し木をするベランダ実験室になりますね」
この子、あの子。住吉さんは日々世話をする木々や草花をそう呼ぶ。まさにわが子に接するような、植物に対する深い愛情が伝わってくる。
挿し木、種蒔き、盆栽も。緑を愛でる喜びは無尽蔵。
東向きで朝日がよく当たる住まいのベランダでは30種類ほどの植物を鉢で育てている。とりわけ、住吉さんが熱中しているのは、生命力の強さを感じずにはいられないという挿し木。
「まだツヤツヤで元気な葉っぱを剪定すると、こんなに勢いがあるものを捨てるなんてできないと思って、挿し木を始めたんです。そしたらどんどん増えて、置き場所がなくなりそうなほど。可愛くて捨てられないんですよね」
オリーブ、ガジュマルなどの常緑樹のほか、ワイヤープランツなどの葉物、またラベンダー、ローズマリー、ミントなどのハーブも挿し木で増やして育て、料理やお菓子に使っている。さらに種からも育てて、ガーデンライフはますます充実してきた。
「岩手にある夫の実家の庭で咲いていた可憐なスミレを連れて帰ってきて、種をとって咲かせたりしています。野の花は雑草と同じで、すぐ芽が出てパワーがありますね。いつもこの種を蒔くとどうなるんだろうっていう好奇心が、ムクムク湧いてきちゃうんです」
探求心は止まらない。ついには深遠なる盆栽の世界にも足を踏み入れた。
「盆栽って大変そうで、手を出すのが怖かったんです。でもラジオ番組で取材した『銀座 雨竹庵(うちくあん)』で、とても素敵なケヤキの盆栽に出合ってしまって、いまや家族の一員です」
そのケヤキの盆栽の枝も剪定して挿し木にした、と笑う住吉さん。盆栽でわからないことがあったら、その都度レッスンしてくれる先生を見つけ、芽摘みや剪定、葉刈りなどを学んできた。
「ケヤキの盆栽って冬は枯れ木だし、夏は葉を広げるし、鉢の中の小さな大自然なんです。手間がかかるだけに、余計いとおしくなりますよね」
これからの季節、草木の枝や葉がいろいろ伸びてきて、剪定などの作業が多くなるけれど、その作業に没頭することで癒やされているのだという。
「伸びたり、開いたり、大きくなったり、植物が元気に育っている姿に触れるのは、こちらもエネルギーがもらえるんです。それは希望だったり、私のもとで育ってくれた喜びだったり、命ってすごいなという感動だったり。ベランダガーデンは楽園ですね」
わたしの園芸道具
右から天然有機肥料の「バイオゴールドオリジナル」、土壌を改良する「バーミキュライト」、剪定後の切り口を保護する「カットパスター」、植物活力素の「メネデール」。
『クロワッサン』1092号より