料理家・渡辺康啓さんの工夫と思想が詰まった男の厨房。
撮影・三東サイ 文・太田祐子
台所は動線が大切。常に見直し、使いやすく。
台所は仕事場でもあり、1日のうち一番長い時間を過ごす場所でもあるという渡辺康啓さん。去年まで住んでいた福岡の台所は広々としていたが、東京へ戻ってからはぐっとコンパクトに。
「狭くなったぶん、より機能的になったと思います。台所の使い勝手を決めるのは動線だから、引っ越し前からしっかりイメージして今の形に」
シンクの背面のシェルフには出番の多い器や毎朝使うトースターなどを収め、包丁は強力マグネットでレンジフードに。よく使う調味料はコンロの前に並べ、リネンは壁に吊り下げ、いつでも使えるようにスタンバイ。
「作る料理が違えば、使う道具も違ってくる。だから道具の配置はしょっちゅう見直して。台所は常に居心地よく、使いやすくしておきたいと思います」
レンジフードの上のスペースを有効活用。
味付け用の塩やオイルなど、よく使う調味料はコンロ前が定位置だが、砂糖や粗塩などはレンジフードの上。「さっと手を伸ばせばすぐ取れる。調理の動線的にもスムーズですね」
調味料は、グループ分けして、まとめて保管。
瓶に移した日本酒や酢、みりんなど和食に使う調味料はまとめて竹のかごに入れている。「このかごを取り出せば必要なものが揃う。あれこれ瓶のラベルを確認するストレスがありません」
考え抜いて作った下ごしらえの相棒、ステンレスカップ。
カウンターに並ぶのは渡辺さん考案のステンレスカップ。刻んだ材料を入れたり、卵を溶いたりの下ごしらえにはもちろん、蓋をすればスタッキングでき、保存容器としても。
工夫の詰まったぴったりサイズのシェルフ収納。
以前から使っていた無印良品のシェルフは今の台所にジャストサイズの幅の天板に替えて。一番上は使う頻度の高い器、一番下にはゴミ箱を格納するなど各段の高さを微調節。
台所をきれいに保つコツは「水滴を放置しないこと」。真っ白なふきんでしょっちゅう台所全体を拭き上げる。奥に見えるやかんは中国で買ってきた。「軽いから吊るしています。やかんって意外と場所をとりますから」
(お気に入りのひと皿)
「春らしい軽やかなシュウマイを目指して作った、握るだけで成形する"シュウマラズ"。新玉ねぎがたっぷり入っていて、ほろほろと口溶けがよいのが特徴です」
『クロワッサン』1067号より