「分とく山」総料理長に教わる、フライパンであっという間に極上ご飯を炊く秘訣。
最新の炊飯器や土鍋に勝るとも劣らないフライパンご飯。コツをつかめば毎日の炊飯がぐっと手軽になります。目指せ、お米の達人!
撮影・青木和義 文・黒澤 彩
「フライパンで炊くご飯はこんなにおいしい」
おいしいご飯、食べていますか?
「水と鍋さえあれば、とびきりおいしくお米が炊けます」とは、 ご飯をこよなく愛する料理人の野崎洋光さん。 店では土鍋を使っているが、 家庭ではフライパン炊きも一つの選択肢だという。
「フライパンはどの家庭にもありますし、扱いやすくて手軽です。 底面が大きく、強い熱が均一に伝わるので、 加熱むらができにくいというメリットも。ちゃんと“かにの穴” ができて、土鍋ご飯と遜色ない炊き上がりです」
注意する点は熱が伝わりやすい分、火加減に気を使うということ。 フライパンの厚さや熱源によって多少の差があるものの、 何度か試してみれば必ずコツをつかめるはずだ。また、 フッ素樹脂加工のものなら焦げついてしまう心配がなく、 淡い焼き色の“おこげ”ができるのがうれしい。 つるんと剥がれるので、洗い物もササッと終了。
「難しくないので、失敗を恐れずにやってみましょう。 おいしいご飯が炊ければ、 たくさんのおかずがなくても満足できます。 ひと粒ひと粒につやがあって、ふっくらと炊けたご飯は、 なによりのご馳走だと思います」
「私がしているお米の炊き方を紹介しましょう」
フライパンで炊くにあたっても炊飯の基本は変わらない。
「ポイントは加熱時間。沸騰するとすぐに米肌(お米の表面) が見えてきます。そこでつい火を止めたくなりますが、 ここがガマンのしどころです」
と野崎さん。米が水を吸ったばかりの時点では、 まだ米のでんぷん質が完全にアルファ化(糊化)していないため、 半生。ここで火を止めて蒸らしても、 米の甘みを感じるふっくらとした炊き上がりにはならない。
「この時点ではまだ道半ばです。 仮面ライダーが上半身だけ変身してズボンをはき替えていない状態 (笑)」
米肌が見え、 ぶくぶくと粘り気が出てきたらタイマーを10分にセット。
「ここから様子を見ながら段階的に火を弱めていきます。 10分経過したら火を止め、すぐに蓋を取らずに、 さらに5分蒸らしましょう」
「フライパンならではのお米ピザ、知っていましたか?」
鍋で炊くご飯の楽しみ、鍋底にできる“おこげ”もフライパンを使うことで一風変わったものができる。
「フッ素樹脂加工のフライパンだと底に米粒がつきにくく、おこげの部分がするりと剥がれます。この丸い形の一枚おこげをピザ生地に見立てて、お米ピザを作りました」
作り方というほどの工程もなく、ごく簡単なアレンジレシピ。フライパンから剥がしたおこげご飯をアルミホイルにのせ、細切りにしたピーマンとパプリカ、くし形切りトマト、ベーコンなど、好みの具材ととろけるシュレッドチーズをトッピング。チーズが溶けてこんがりと焼き色がつくまでオーブンで焼けば完成だ。
「ボリュームがあって、焼きおにぎりのような香ばしさも楽しめますよ。具材はなんでもいいんです。自由な発想でいろいろのせてみてください」
一度炊くと二度おいしいフライパンご飯。チーズとも驚くほど相性がよく、新たな魅力に開眼!
『クロワッサン』1055号より