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脳梗塞や認知症、動脈硬化、心疾患を招くゴースト血管とは。

脳梗塞や認知症、心筋梗塞などの恐ろしい病気は、直接的には動脈が関わるものも多いのですが、毛細血管の衰えによることも少なくありません。血管すべてが健康でなければ安心できないのです。

文:韮澤恵理 イラストレーション/秋葉あきこ(構造図)、ヤマグチ・カヨ 

[ 血管の不調が招くトラブル例 ]

●糖尿病の悪化
【腎障害や網膜症、神経障害に】

食事の乱れなどによる糖尿病には、高血糖によって血管がもろくなる合併症がある。高血糖は全身の毛細血管を傷つけます。糖尿病性の腎障害や網膜症、神経障害などは毛細血管のトラブルが原因です。

●消化器の不調
【胃酸の異常や消化不良、腸の異常】

毛細血管は粘膜の保護にも重要な役割を果たす。毛細血管の機能低下によって胃腸の粘膜が不調になると、胃酸の分泌や消化酵素の生成、腸内環境の悪化による栄養素の吸収阻害など多くのトラブルが。

●腎臓のトラブル
【腎臓のトラブル腎機能障害・腎不全】

腎臓の内部は多くの毛細血管から成り立っていて、塩分と水分の調整をして血圧を維持したり、血液の状態をコントロールしたりしている。毛細血管がダメージを受けると血圧や血管のトラブルに。

●免疫力の低下
【がん、ウイルスや細菌による感染症】

血流が良ければ免疫を担う白血球やリンパ球がしっかり全身を巡り、体内に侵入した細菌やウイルス、がん細胞を見つけて戦える。血流が悪くなると、異物への対応が遅れてしまい、免疫力が低下する。

突然の大病も日常の不調も鍵を握るのは血管と血流

血管の病気といえば、動脈硬化や、そこから派生する心筋梗塞、脳梗塞、大動脈瘤、大動脈解離などが思い浮かびます。確かにある日突然に発症して命に関わる病気なので、心配は尽きません。

しかし、私たちが普段は意識していない毛細血管もまた、さまざまな病気の原因になっています。

まず、毛細血管が詰まったり減ったりし、その先の血管が消えてしまった状態をゴースト血管と呼んでいます。血管がゴースト化すれば、血液の流れが悪くなり、その分の血液が動脈を圧迫し、血圧が上がります。腎臓には糸球体という毛細血管の集合体のような部分がありますが、毛細血管が衰えれば血液中の塩分や水分のバランスがとれなくなり、高血圧や、さらには脳卒中、心筋梗塞へとつながります。

腎不全のような重篤な状態になれば、血液透析などを受けなければならなくなる可能性も出てきます。

組織にきちんと栄養や酸素が届かないと、臓器の機能が落ちてしまいます。脳内の毛細血管が詰まったり減ったりすると、その先に空洞ができてしまい、脳血管性認知症に至る可能性もあります。

あまり血管と結びつかない印象がある消化器も、消化管の内側の粘膜にある絨毛(じゅうもう)にきちんと血液が届けられないと、粘液が減ってしまったり、腸壁から栄養素をしっかり受け取れなくなるなど、トラブルの種類は計り知れません。

ドライアイやドライマウスなど乾燥を伴う不調も、実は血流の悪さによるものです。

血管は動脈、静脈、毛細血管と分けて考えるのではなく、どちらもきちんとケアしていくことが一番大切です。

[ 毛細血管のダメージはこんなに怖い ]

認知症や心筋梗塞、脳梗塞、大動脈瘤といった恐ろしい病気の原因が実は毛細血管のゴースト化も大きく影響しているので要注意です。

【脳】認知症は脳の血管トラブルかも

脳梗塞や認知症、動脈硬化、心疾患を招くゴースト血管とは。

【ラクナ梗塞 (小さな脳梗塞)】

ラクナ梗塞とは脳内に小さな空洞ができること。毛細血管の血行不良によって起こる。これが増えてくると脳血管性の認知症の原因になる。
 ↓
【脳血管トラブル 脳血管障害(脳出血・脳梗塞)
 ↓
【認知症 微細な脳梗塞による脳細胞の死滅による

【腎臓】腎臓の毛細血管は脳・心疾患に影響

脳梗塞や認知症、動脈硬化、心疾患を招くゴースト血管とは。

●高血圧
血液中の塩分が増えると濃度を保つために水分も増え、血圧が上がる。

●腎機能の低下
腎臓は毛細血管の集まり。腎臓が機能しなくなると血液中のナトリウムや水分を処理できない。

【ナトリウムの残留+水分の残留】
 ↓
【血液量が増えたままで血圧が上昇する】
 ↓
【大動脈に負担がかかる】
 ↓
【脳卒中】
脳の動脈が破裂し、脳を圧迫
【心臓のトラブル】
狭心症・心筋梗塞(虚血性心疾患)
【大動脈のトラブル 】
(大動脈瘤・大動脈解離)

  • 根来秀行

    監修

    根来秀行 さん (ねごろ・ひでゆき)

    医師、医学博士。

    東京大学大学院医学系研究科内科学専攻博士課程修了。ハーバード大学医学部客員教授、ソルボンヌ大学医学部客員教授、フランス国立保健医学研究機構客員教授、杏林大学医学部客員教授、事業構想大学院大学理事・教授。専門は内科学、腎臓病学、抗加齢医学、睡眠医学など多岐にわたり、最先端の臨床・研究・医学教育の分野で国際的に活躍中。『毛細血管は増やすが勝ち!』(集英社)、『ホルモンを活かせば、一生老化しない』(PHP研究所)、『老けない、太らない、病気にならない 24時間の過ごし方』(幻冬舎)、『【図解】毛細血管が寿命をのばす』(青春出版社)など著書多数。

『Dr.クロワッサン 毛細血管を増やして、血流力をつける!」(2018年11月15日発行)より。

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