からだ

腰痛を引き起こす生活習慣とは?セルフチェックで問題を発見。

  • 文・山下孝子 イラストレーション・松元まり子

日本人の約8割は、その生涯で腰痛を経験しているといわれています。

それを裏付けるように、厚生労働省が病気やけがの自覚症状がある人々へ、どのような症状に悩んでいるのかを調査したところ、男性は腰痛が1位、女性も1位の肩こりと僅差で2位が腰痛でした。

近年、若い世代にも腰痛に悩む人が増えていますが、腰痛のリスクは、やはり年齢を重ねるほど高くなります。

「ところが、腰痛の多くは生活習慣に気をつけることで 改善や予防ができるのです!」

教えてくれた人・伊藤晴夫さん 整形外科医

その方法について紹介する前に、このページにある項目をチェックし、自分の生活習慣に腰痛のリスクがあるのか、「腰の健康寿命」を削っていないのかを確認しましょう。

あてはまる項目にチェックをつけてみましょう。

01 ▢ いつも同じ側の手で、カバンや買い物袋を持っている。
02 ▢ 仕事や家事で中腰の姿勢になることが多い。
03 ▢ 歩く機会が少なく、定期的な運動もしていない。
04 ▢ 自宅の調理台や洗面台、机や椅子などの高さが身長と合っていない。
05 ▢ やわらかめの敷き布団やマット(寝具)を使っている。
06 ▢ 重い荷物を持ち上げたり、運んだりすることが多い。
07 ▢ 幼い孫を預かったり、家族を自宅で介護したりしている。
08 ▢ 寒がりである、または体を冷やしてしまうことが多い。
09 ▢ 以前に比べると身長が縮んできている。
10 ▢ テレビを見るときなど、自由時間はソファで過ごすことが多い。
11 ▢ 姿勢が悪いとよく言われるし、自分でもその自覚がある。
12 ▢ 昔から高めのハイヒールを履くことが多い。
13 ▢ 自分が喫煙者、または家族から受動喫煙している。
14 ▢ デスクワークの時間が長く、しかも無意識に足を組みがちである。
15 ▢ パソコンやスマートフォンを使っている時間が長い。
16 ▢ 毎日運転しており、しかも乗車している時間が長い。
17 ▢ 栄養バランスが偏った食事が続き、体重が増えてきている。
18 ▢ 細かいことが気になり、くよくよ悩む性格である。
19 ▢ 仕事やプライベートでストレスを抱えている。
20 ▢ 毎日忙しくて、なかなか疲れがとれない。
  ↓

【チェックが3個以下の人】
現時点では腰痛になる危険性は低いといえます。しかし、どんなことが腰痛のリスクを高めるのかを本書で学び、腰痛予防を怠らないようにしましょう。

【チェックが4~8個の人】
腰痛のリスクがやや高めです。運動や食事などを見直して、腰の負担が少ない動きを身につけることで腰痛になる危険性を少しでも低くしましょう。

【チェックが9個以上の人】
腰への負担が大きい生活を送っており、すでに腰痛を抱えている可能性もあります。本書で紹介する腰痛の改善&予防方法を実践しましょう。

※上記の項目は『腰痛をすっきり治すコツがわかる本』(永岡書店)を参照。

各項目の何が問題かは、以下で解説

「セルフチェック項目のココが問題!」【腰痛を引き起こす生活習慣】

(01)いつも同じ側の手で、 カバンや買い物袋を持っている。

いつも同じ側の手で荷物を持っていると、両手に分散して持つ場合より腰椎への負担が約3倍に増えます。また、片側の筋肉だけトレーニングしているようなものなので、左右の筋肉のバランスが崩れ、姿勢を悪化させる危険があります。そのため、買い物のエコバッグも大判のものを1つより、中判のものを2つ常備しておくほうがよいでしょう。

(02)仕事や家事で中腰の姿勢になることが多い。

正しい姿勢で立っているときでも、人間の腰には体重と同じ重さの力がかかり、体を前に傾けるほど腰への負担は増えます。上半身を前に20度傾けた場合、その負担は50%も大きくなるのです。

(03)歩く機会が少なく、 定期的な運動もしていない。

腰痛を予防するためには、背筋、腹筋、大臀筋(だいでんきん)の3種類の筋肉の筋肉量を維持し、正しい姿勢を保つ必要があります。これらの筋肉は歩くことである程度維持できますが、体を動かさないと衰える一方です。さらに、運動不足は腰痛を引き起こす要因のひとつである肥満のリスクを高めます。

(04)自宅の調理台や洗面台、机や椅子などの高さが身長と合っていない。

自分の体よりも低い調理台・洗面台・机を使っていると、腰に負担をかける前傾や中腰の姿勢になってしまいがちです。また、膝が曲がって骨盤より高い位置になるような低い椅子も、腰への負担を増やします。ただし、足の裏が床につかないほど高い椅子も腰によくありませんので要注意です。

(05)やわらかめの敷き布団やマット(寝具) を使っている。

やわらかい敷き布団やマットは腰が沈み込んでしまい、背骨のS字状カーブが崩れ、さらに寝返りも打ちづらくなります。寝返りが打てないと腰回りに体重が集中し、その部分の血の巡りが悪くなって腰痛のリスクを高めてしまうのです。

(06)重い荷物を持ち上げたり、 運んだりすることが多い。

荷物を持つとそれだけ上半身の重量が増えるため、腰への負担も増えてしまいます。さらに荷物を持ち上げる動作は、ついつい中腰になりがちで、何も持たずに中腰になるときよりも腰への負担が大きくなるのです。

(07)幼い孫を預かったり、 家族を自宅で介護したりしている。

幼い子どもの面倒を見ていると、抱っこをせがまれることや、急に抱きかかえる必要があることがよくあります。また、介護をしていると家族の体を支えることが多くなります。つまり、状況的には(6)と同じ状態になってしまうのです。

(08)寒がりである、 または体を冷やしてしまうことが多い。

寒がりの要因のひとつが、筋肉量が減って体温が上がりづらくなっていることです。筋肉量が減るということは、正しい姿勢を保ちづらくなることを意味します。また、冷房で外側から、冷たい物を飲んだり食べたりして内側から体を冷やしてしまうと、血行不良が起こります。どちらも腰痛のリスクを高めてしまうので要注意です。

(09)以前に比べると身長が縮んできている。

身長が縮む原因として考えられるのが、骨粗しょう症による背骨の圧迫骨折、背骨の椎間板に問題が起きている腰椎椎間板ヘルニア、さらに腰椎がずれてしまう腰椎すべり症など、背骨にトラブルが発生している可能性が高くなります。

(10)テレビを見るときなど、 自由時間はソファで過ごすことが多い。

ソファの材質にもよりますが、座面がやわらかいものはお尻が沈み込んで膝の位置が骨盤より高くなりがちです。そうなると背中も丸まってしまうので、椅子のときよりも背骨や腰椎に負担がかかってしまいます。

(11)姿勢が悪いとよく言われるし、自分でもその自覚がある。

上半身が前に傾く猫背、後ろに傾く反り腰、そして中腰といった悪い姿勢を取り続けると、背骨のS字状カーブが崩れ、上半身の重さを分散できなくなり、腰の負担が増大します。また、悪い姿勢は背中や腰の筋肉を緊張させ、腰痛のリスクをさらに高めるのです。

(12)昔から高めのハイヒールを履くことが多い。

ヒールがある靴を履くと、体の重心が少し前に移動しますが、体が自然にバランスを調整するので腰痛の原因にはなりません。しかし、ヒールの高さが5cm以上の場合は、背筋などの筋肉の負担が大きくなり、腰痛を引き起こす可能性が高くなります。

(13)自分が喫煙者、 または家族から受動喫煙している。

煙草に含まれるニコチンは、血管を収縮させて血の巡りを悪くします。人間の筋肉は血液が運ぶ酸素によってエネルギーを得ているため、血行不良によって筋肉が硬くなったり、神経障害が起きたりすることで、腰痛が引き起こされるのです。

(14)デスクワークの時間が長く、しかも無意識に足を組みがちである。

座る姿勢は、実は正しい姿勢で立っているときよりも腰への負担が40%大きくなります。デスクワークは同じ姿勢のままでいることが多く、背中や腰の筋肉を緊張させます。また、足を組むと落ち着くのは骨盤の位置がゆがんでいるためですが、これは姿勢の悪化を招きます。どちらも腰痛のリスクを高めるので要注意です。

(15)パソコンやスマートフォンを使っている時間が長い。

パソコンなどを使う場合、画面をのぞき込むために前かがみになります。またスマートフォンを使う場合も、つい手元をのぞき込む姿勢になり、首の骨が描いているゆるやかなカーブが消える「ストレートネック」という症状を引き起こします。どちらも腰への負担を増やす姿勢のため、定期的に背伸びをしたり、スマートフォンを高く持ったりする必要があります。

(16)毎日運転しており、しかも乗車している時間が長い。

自動車の座席は腰への負担が少ない構造ですが、運転中は同じ姿勢が続くため、長時間の運転ほど腰痛のリスクが高くなります。運転が長距離になる場合は、最低でも2時間に1度、休憩をとるようにしましょう。

(17)栄養バランスが偏った食事が続き、 体重が増えてきている。

バランスの悪い食生活が続くと、筋肉量が減ったり、骨密度が下がったり、さらに体重が増えてしまったりします。年をとってから太ると、その重さに骨や筋肉が対応できずに腰に負担をかけます。特に閉経後の女性は、ホルモンの関係で肥満や骨粗しょう症のリスクが高くなりますので、普段の食事で骨によいビタミンDやビタミンK、筋肉の材料であるたんぱく質を積極的に摂取するようにしましょう。

(18)細かいことが気になり、くよくよ悩む性格である。

細かいことが気になるという性格は、言い換えれば注意深いともいえます。ですから本来は長所なのですが、いろんなことを気にしすぎてしまうと、それはストレスに変わります。実は、最近ストレスが腰痛の要因になることが判明しているのです。

(19)仕事やプライベートでストレスを抱えている。

ストレスによって自律神経が乱れると、筋肉が緊張したり、血行不良が起きたりすることで腰痛が起きることがわかっています。状況によってはゼロにすることが難しいかもしれませんが、自分に合った気分転換の方法を見つけ、ストレスを減らすようにしましょう。

(20)毎日忙しくて、なかなか疲れがとれない。

腰痛を引き起こす自律神経の乱れは、疲労によっても起こります。また、うつ病の患者の約半数は腰痛を訴えるため、疲れているのに眠れない、休んでも疲労感や倦怠感(けんたいかん)がなくならないなど、うつ状態の症状が出ている場合は要注意です。

伊藤晴夫

伊藤晴夫 さん (いとう・はるお)

整形外科医

メディカルガーデン整形外科院長。JCHO東京新宿メディカルセンター(旧東京厚生年金病院)元副院長・整形外科部長。岐阜大学医学部卒業。腰痛疾患や股関節疾患の臨床に長年携わり、一流アスリートの治療にもあたっている。『腰痛の運動・生活ガイド』(日本医事新報社)、『腰痛をすっきり治すコツがわかる本』(永岡書店)など、腰痛関連の著書・監修書多数。

※プロフィールは雑誌掲載時の情報です。

『Dr.クロワッサン 脊柱管狭窄症、骨粗しょう症、ぎっくり腰もスッキリ! 腰痛の新常識』(2020年8月27日発行)より。

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