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結婚は、不安定な男女関係を安定させるための、ひとつの解決方法でしかない――アニエス・ヴァルダ(映画監督)

1977年創刊、40年以上の歴史がある雑誌『クロワッサン』のバックナンバーから、いまも心に響く「くらしの名言」をお届けする連載。今回は、名監督の言葉から「結婚」と「自立」の問題をあらためて考えます。

文・澁川祐子

結婚は、不安定な男女関係を安定させるための、ひとつの解決方法でしかない――アニエス・ヴァルダ(映画監督)

1979年3月10日号「クロワッサンインタビュー」より
1979年3月10日号「クロワッサンインタビュー」より

以前にも映画『歌う女 歌わない女』の日本上映に際し、特集(記事はこちら)が組まれていたヌーベルバーグ旗手アニエス・ヴァルダ(1928-2019)。

1977年制作の同作は、生き方も考え方も違う2人の女性の十数年に及ぶ友情物語。結婚、出産、育児、仕事などのライフイベントを通じ、それぞれが自分なりの幸福や自立の形を求めていく姿が描かれ、大きな反響を巻き起こしました。

今回は巻頭インタビューに登場し、「結婚」について語っています。結婚すると多くの男性は後悔をすると言われているのに対し、〈女性はそうではないという見方がありますが〉とインタビュアーに尋ねられ、〈とんでもない。女性も後悔しますよ(笑)〉と即答。そして、今回の名言が続きます。

人生の伴侶を得るのに、結婚は唯一解ではない。さらにいえば、結婚は必ずしも男女関係の安定を約束するものではないということでしょう。

彼女が理想としているのは、法的に束縛されない〈自由な結婚〉。法的な結婚をするなら〈男女がお互いに自立的な人間性を保つために、充分考慮する必要があるでしょう〉と述べています。

この発言から40年以上の月日が経ち、フランスでは事実婚がもはや珍しいものではなくなりました。一方の日本は、いまだに夫婦別姓すら容認されていない状況です。

当時から問題意識はありながら、いつまで経っても制度の壁が超えられないのはなぜだろうか。そこには、やはり「自立」に対する腹の括り方の違いがあるのではないかと、時を経たからこその問いかけがその言葉にはありました。

※肩書きは雑誌掲載時のものです。

澁川祐子(しぶかわゆうこ)●食や工芸を中心に執筆、編集。著書に『オムライスの秘密 メロンパンの謎』(新潮文庫)、編著に『スリップウェア』(誠文堂新光社)など。

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