くらし

女である私までが、苦しんでいる女を扱わなくてもいい――アニエス・ヴァルダ(映画監督)

1977年創刊、40年以上の歴史がある雑誌『クロワッサン』のバックナンバーから、いまも心に響く「くらしの名言」をお届けする連載。今回は、女性の自立を描いた映画を世に送り出した、ヌーベルバーグの旗手の言葉をひもときます。
  • 文・澁川祐子
1978年12月10日号「歌う女 歌わない女」より

女である私までが、苦しんでいる女を扱わなくてもいい――アニエス・ヴァルダ(映画監督)

アニエス・ヴァルダ(1928-2019)は、夫のジャック・ドゥミ(1931-1990)とともに、ヌーベルバーグの二大作家と称される映画監督。この記事は、代表作となった『歌う女 歌わない女』の公開を記念して編まれたものです。

物語の主人公は、歌手志望の明るい17歳の高校生・ポムと、写真家の愛人で、生活に疲れた22歳の未婚の2児の母・シュザンヌ。1962年の冬のパリで出会った歌う女・ポムと、歌わない女・シュザンヌという両極の女性2人が友情を育みながら、それぞれ結婚や出産、育児、仕事や社会運動などと向き合い、自らの足で歩んでいく姿を描いています。

記事では、映画を観た人の感想を交えながらストーリーを追うとともに、離婚や中絶などの社会問題にも言及。最後に「アメリカのウーマン・リブの批判に答えるアニエス・ヴァルダ。」と題したインタビューも掲載しています。

ウーマン・リブ全盛の当時、この映画はフェミニストたちから<あまりにも楽天的で、おとぎ話じみている>という批判があったといいます。それに対して彼女は、みじめな苦しむ女たちではなく、<法律や制度を相手に闘う楽天的な“光の中の女たち”を描きたかった>と語ります。

そして、フェミニスト運動には<理論家も怒れる女も必要だが、いろいろなタイプの人間が参加すべきでないか>と主張。批判するだけでなく、ときに希望を持って未来を描く者がいることもまた、運動を続けていくには大切なことに違いありません。フェミニズムが再度の盛りあがりをみせているいまこそ、さまざまな女性たちがそれぞれのやりかたで闘うべきだ、という彼女の声に耳を傾けたいものです。

※肩書きは雑誌掲載時のものです。

澁川祐子(しぶかわゆうこ)●食や工芸を中心に執筆、編集。著書に『オムライスの秘密 メロンパンの謎』(新潮文庫)、編著に『スリップウェア』(誠文堂新光社)など。

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