ユーミン(松任谷由実さん)のデビュー以来48年間の、全38枚のオリジナルアルバム、セルフカバーアルバム、7枚のベストアルバム、全41曲のシングルが、アップルミュージック、ラインミュージックなど、音楽配信サービスで楽しめる。
料金は月額300〜1000円ほど。しかも全曲リマスタリングが施され、どの時代の作品も最新の音質で何度も聴くことができる。
「10年前にいいなと感じた音が、今、必ずしもいいわけではないですよね。技術も、時代も変わっているので。でも、かなり高音質で聴けるようになったとは思いますよ」
とは、このリマスターの配信もプロデュースした松任谷正隆さん。
質の高いリマスタリングは音がクリアでバランスがいいだけではなく、ユーミンが歌う世界観が、より臨場感をもって伝わる。1970年代の曲も時代の経過を感じさせない上、作品の持つ普遍性がわかる。
ユーミンの作品は文学性が濃い。歌詞が描く情景に、歌の主人公の心情がにじむ。短編小説のように、歌詞に“行間”があり、その空白から、リスナーは自分自身の物語を読み取る。歌われている街角や海辺にたたずんでいる気持ちになる。
「やさしさに包まれたなら」「卒業写真」「あの日にかえりたい」「守ってあげたい」「hello, my friend」「春よ、来い」……。ユーミンはいくつものヒット曲を生んできた。でも、まだ目立たない名曲はたくさんある。全曲一挙に聴ける配信だからこそ、自分にとっての名曲を探してみては。
たとえば「夕涼み」。濡れた髪、灼けたうなじ、痛いほどの抱擁……。たとえば「霧雨で見えない」。愛し合った人と暮らした街、雨に煙る水銀灯、まつ毛を濡らす涙……。どちらも失った恋を思うバラードだ。情緒的に響くシンセサイザーやサックスに導かれ、二度と戻らない夏の午後、雨の歩道が鮮やかによみがえる。
全曲配信は、文学全集のように作品を深く味わえるだろう。