我が青春はゴダール一色だった。時期は、ちょうど「ゴダールの映画史」「愛の世紀」などの新作が続く渋めな時期ではあったが、なぜか私はゴダールにずっぱまり、「右側に気をつけろ」と「気狂いピエロ」と「男性・女性」を、涙を流しては繰り返し見続けるという日々だった。仕事もうまくいかないし、失恋の痛手は癒えず、とにかくゴダールの映画をむさぼるように観ていた。
ミシェル・アザナヴィシウス監督の「グッバイ・ゴダール!」を前に、胸が苦しくなった。以前、アンヌ・ヴィアゼムスキーの「彼女のひたむきな12カ月」(続編「それからの彼女」が今回の原作)を読んで、ゴダールのストーカー&変質狂ぶりに震えた(山内マリコさんの解説含めぜひご一読を)記憶もよみがえる。しかし、そんなゴダールを描くアンヌの筆致と同じく、この映画もまた、冷静で辛辣でありながらもスラップスティック調で、溢れんばかりの愛に満ちていた。