専門医に聞いた、知らぬ間に劣化している血管と骨のメカニズム
撮影・岩本慶三 イラストレーション・竹井晴日 構成&文・堀越和幸
【血管】徐々に硬くなる血管は、命に関わる病気にも発展
女性は閉経を迎えると女性ホルモンのエストロゲンが大幅に低下する。すると、血管が硬くなるのだという。どうしてか? そのメカニズムについて「かおるこHappyクリニック」院長の伊藤薫子さんに教わった。
「大きな原因としては2つ考えられます。血管内の内皮細胞では一酸化窒素が作られていて(下イラスト)、普段はそれが血管を広げ、しなやかにする役割をしています。エストロゲンが低下すると一酸化窒素が減り、血管は硬くなってしまうのです」
そして、エストロゲンの低下は、脂質代謝にも影響を及ぼす。
「悪玉コレステロールと呼ばれるLDL値を高めます。LDLは血管の内壁に粥状となって付着しやすく、これも血管を硬くする一因です。LDLは40代くらいまでは男性のほうが圧倒的に多いのですが、閉経前後からは一気に逆転、女性が高くなります」
血管の一番内側にある内皮細胞が一酸化窒素を作り出す。一酸化窒素は血管の筋肉をしなやかに保ち、血液を流れやすくするため、血管の健康の鍵となる
さらには加齢とともに引き起こされる“ゴースト血管”と呼ばれる現象にも気をつけたいところ。
「血管自体は存在しているのに、血液が通わなくなったり血流が途切れたりする、機能の低下した毛細血管をそう呼びます。簡単なセルフチェックである程度判定できますので、試してみましょう(下イラスト)」
上はゴースト血管の概念図。人差し指の爪をギュッと5秒つまんで、離した後に3秒以内で爪の赤みが戻れば毛細血管は健康。白いままの人は要注意だ
さて、これらの血管にまつわる不具合は放っておくとどうなるのか?
「血管が硬くなって怖いのは、自覚症状がない点です。放っておけば高血圧や動脈硬化になるし、やがては心筋梗塞や脳卒中など命に関わる病気へとつながっていきます」
自覚症状がないにしても、もちろん無策ではいられない。
「閉経を迎えた女性は、一度血液検査をしてみましょう。血圧やLDL値、血管へのダメージの指標となる血糖値などを把握することが大切です」
LDL値や血糖値など動脈硬化に関わる数値は、血液検査で知ることができる。もっと本格的に血管の厚さを調べたい人には、頸動脈エコーという選択肢も
【骨】閉経とともに骨密度が低下。寝たきりを避けるためにも早めにケア
閉経を迎えた女性の骨は脆くなるとはよく聞く話だが、こちらもエストロゲンの低下と密接な関係がある。
「骨はそもそも破骨細胞が古い骨を壊し、骨芽細胞が新しい骨を再生するというサイクルにより新陳代謝を繰り返していますが、エストロゲンが低下すると破骨細胞の働きが上回り、結果、骨が弱まり、骨量も落ちていくのです(上グラフと下イラスト)」
破骨細胞が骨を溶かして血中にカルシウムを流し(左側)、骨芽細胞が血中からカルシウムを取り入れて骨を作る(右側)のが、骨の新陳代謝
こちらもなかなか自覚症状的にはわかりづらいが、気づきとなる兆候はいくつか挙げられる。
「例えば、身長が3㎝ほど縮んだ、背中が丸くなった、少しの衝撃で骨折したという人は、もしかすると骨密度の低下が原因かもしれません」
さらに厄介なことには、身長が縮んだ人の中には、骨折していても気づかない、“いつの間にか骨折”を起こしている場合もあるのだという。
「正式には“脊柱圧迫骨折”と言いますが、骨密度が低下して、普通に生活していても背骨が潰れて背中が湾曲してしまう状態です(下イラスト)。60代くらいでジワジワ増えます」
痛みがないのでつい放置してしまいがちだが、すると……。
「骨粗鬆症が進んで、周辺の骨が骨折したり、それがきっかけで寝たきりになり、そのまま認知症に発展するというのはよくある事例です」
骨密度が低くなると自体重の圧迫で胸椎〜腰椎にかけての骨が潰れて、骨折しやすくなる。そのまま気づかないと背中の湾曲が進み、周辺の骨の骨折にも
伊藤さんによれば、大腿骨を骨折して寝たきりになる人の死亡率は、一気に跳ね上がるのだという。
「1年以内の死亡率が約10%という数字も聞きます。寝たきりで体力が低下、さらに誤嚥性肺炎や肺塞栓症、感染症リスクも上がってしまう」
では、そんな目に見えない自分の骨の変化とはどう向き合うべきか?
「骨密度を調べましょう。お勧めはDXA(デキサ)法と呼ばれる腰椎と大腿骨をX線で測る方法。精度が高くて被ばく量も低い。5分くらいで計測できます」
腰椎と大腿骨で骨密度を測るDXA法の検査は精度が高い。最寄りの医療施設にDXA法がない場合は、踵などの骨で調べる超音波法もおすすめだ
『クロワッサン』1175号より
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