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【副住職に学ぶ、減塩料理】<1>
4種の乾物を使った精進出汁の作り方。

600年以上の歴史を誇る禅寺。副住職に、減塩のお手本たる出汁と料理について聞きました。まずは精進出汁の作り方から。

大豆、かんぴょう、昆布、椎茸。材料の質は問わない。味が出にくければ切り込みを入れたり、戻す時間を長めに。

大豆、かんぴょう、昆布、椎茸。材料の質は問わない。味が出にくければ切り込みを入れたり、戻す時間を長めに。

「味見してみますか」

差し出された小皿には、うっすらと色のついた出汁。ふわりとたった湯気ごと飲み干すと、ううむ、なんというか、これって意外と……。

「淡い、でしょう」

 ほほえむのは、山梨県都留市で長い歴史をもつ耕雲院の副住職、河口智賢さん。味が薄いのとは、ちょっと違煎り大豆の香ばしさ、かんぴょうの甘み、椎茸のうまみ、それに昆布の滋味と、材料の味は存分に出ているのだから。しかし舌にのるや、その味は淡雪のように溶けて消えてしまいます。はかなくて、頼りない。

「これこそが精進料理に大切な『淡たん』なんです」

「淡」とは精進料理において、酸、苦、甘、辛、塩の五味に加え、それ以上に最も尊ばれる味の基本だ。その力は、旬の野菜を調理したときに発揮される。精進出汁でふっくり煮含めた秋野菜の味わいたるや。けんちん汁の体に染み渡るような滋味、炊き込みご飯の、きのこのふくよかな香り。

 

無駄にせず、手間を惜しまず。
だからおいしい出汁になります。

香りづけ程度にわずかの醤油を使った料理もあるが、塩はほとんど使っていない。あのはかなげな精進出汁が野菜のうまみを引き出して、塩気がなくても大満足。気づけばすんなりお腹におさまります。これぞ、「淡」のなせる業。味は、調味料で加えるのではありません。素材そのものから引き出すのです。

「曹洞宗では、料理を作ること、いただくことも大切な修行とされています。料理は必ず誰かのために作ります。そこに思いやりの心が生まれます。また、身近な人の健康を願い、ゆるがない心をもって作ることも大切です」

福井県にある大本山永平寺での修行時代、河口さんは典座(僧侶の食事や仏前に供える料理を作る僧)として、毎朝、いくつもの大鍋に200人分余りの精進出汁を引いていました。通常は昆布と椎茸。特別な法要では、大豆とかんぴょうも加えます。

「その特別な精進出汁を初めて口にしたときは、驚きました。コクがあって、香りもよくて」

特別といっても、材料は質を問わない。大切なのは材料の扱い方です。

「素材の力を引き出す精進出汁は料理の主役で、縁の下の力持ち」と河口さん。

「素材の力を引き出す精進出汁は料理の主役で、縁の下の力持ち」と河口さん。

「お寺では、心ある方からのいただきものもありますし、近所のスーパーで素材を買ってくることもあります。つまり毎回、材料はさまざまなんです。それを無駄にせず、生かしきること。

日高昆布や羅臼昆布ならうまみは出やすいものですが、味が出にくい昆布なら、細かく切り込みを入れ、時間をかけて戻します。大豆は半分量を香ばしくから煎りします。そのほうが深みが出るのですが、全量を煎ると、えぐみが出るので気をつけています」

一晩水につけた乾物を強火にかけ、軽くアクをすくって、グツッとひと煮立ち。すぐに火を止めて出汁がらを引き上げれば、えぐみの少ない精進出汁のできあがり。季節の野菜と調理すれば、素材ほんらいの味に深みが加わって、塩気が足りないなどと思わない、もちろん出汁までおいしく飲み干せる。この出汁でこしらえた味噌汁は最高!との声も。


 

4種の乾物を使った精進出汁の作り方。

材料(2ℓ分) 
水2ℓ 大豆30g 昆布10×5㎝ 干し椎茸(小)1個 かんぴょう15㎝

1.大豆の半量を軽く焦げ目がつくまでから煎りする。
2.昆布はハサミで切り込みを入れておく。
3.すべての材料を鍋に入れ、一晩おく。
4.3を沸騰直前まで加熱して、アクをすくう。
5.取り出した出汁がらは、甘辛く煮付けて佃煮に。

精進出汁は出汁ポットに入れて保存すれば、使い勝手もよし。冷蔵庫で3~4日保存可。その際、塩をひとつまみ入れる。

精進出汁は出汁ポットに入れて保存すれば、使い勝手もよし。冷蔵庫で3~4日保存可。その際、塩をひとつまみ入れる。


【副住職に学ぶ、減塩料理】<2>精進出汁が味を引き出す料理5品はこちらから。
https://croissant-online.jp/topics/38694/

 

◎川口智賢さん 耕雲院副住職、全国曹洞宗青年会教化法式委員会委員長

『クロワッサン』911号(2015年10月25日号)より

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