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ストレス対策、まずは本質を知ることから。

複雑な現代社会ではたまる一方のストレスですが、その正体を知ってうまく対処できれば、恐るるに足らず!
心ざわつく今だからこそ、正しい理解から始めましょう。

イラストレーション・柿崎サラ 文・長谷川未緒

奥田弘美(おくだ・ひろみ)さん●精神科医、作家。精神科臨床とともに複数企業の産業医として、働く人の心のケアを実施。共著に『心に折り合いをつけてうまいことやる習慣』(すばる舎)。
奥田弘美(おくだ・ひろみ)さん●精神科医、作家。精神科臨床とともに複数企業の産業医として、働く人の心のケアを実施。共著に『心に折り合いをつけてうまいことやる習慣』(すばる舎)。

「ストレスがたまる」とか「ストレスを発散したい」などと安易に口にするけれど、そもそもストレスとは何だろう。

精神科医の奥田弘美さんによると、

「原則的には心と体の“いつもの状態”を乱す変化や刺激をストレスと考えます」

私たちの心と体は、常に一定の状態を維持しようとする恒常性がある。過度な興奮や落ち込みもなく、安らかな状態を保ちたいし、血圧や体温などは一定値をキープしようと自律神経が働いている。ところが何か起こると、気分の浮き沈みが生じたり、血圧や体温なども、変調を来してしまう。

「まん丸の風船やゴムボールに圧がかかると、へこみますよね。この圧が変化や刺激です。心というボールがへこんでも元に戻る程度ならばいいのですが、大きくへこんで跳ね返すことができず元に戻らなくなると、気分の落ち込みや睡眠障害などのストレス反応を引き起こします」

ストレスとなるのは、身内の不幸やリストラ、借金、人間関係のトラブルといったネガティブな出来事ばかりではない。結婚や妊娠・出産、昇進といったポジティブな出来事も、大きなストレスになる。身の回りの環境や人間関係で起こる変化や刺激は、大なり小なり日常生活に影響を及ぼし心身のエネルギーを消耗するストレスにつながると心得よう。

人生で起きる出来事によって生じるストレスを数値化した「ストレスマグニチュード」(1967年、米国の精神科医T・ホームズらが開発)。それを元に制作された現代日本版が下の表。順位は全50項目からの抜粋。

日本人のストレスランキング

データの提供元:特定非営利活動法人イシュープラスデザイン データのすべての順位が見られる掲示画面:神奈川県厚木市健康づくり課(ストレスマウンテンあつぎ) ※ストレスポイントとは、「配偶者の死によるストレスを100点」「結婚によるストレスを50点」とした場合の様々な出来事から受けるストレスについて点数化したもの。
データの提供元:特定非営利活動法人イシュープラスデザイン データのすべての順位が見られる掲示画面:神奈川県厚木市健康づくり課(ストレスマウンテンあつぎ) ※ストレスポイントとは、「配偶者の死によるストレスを100点」「結婚によるストレスを50点」とした場合の様々な出来事から受けるストレスについて点数化したもの。

ライフステージによって変わる 年代別ストレスの特徴。

終わりの見えない介護はひとりで抱え込むとストレス大。使える制度は、どんどん利用しよう。
終わりの見えない介護はひとりで抱え込むとストレス大。使える制度は、どんどん利用しよう。

ストレスの主な要因には年代ごとに特色がある。

「20代はまだ学生気分が抜けておらず『仲間と楽しく働きたいのに』という相談をよく受けます。仕事や職場の人間関係が主なストレス。30代は結婚や出産など大きなライフイベントが重なりますし、40代は子どもの進学、受験など子育てのストレスが大きい。働いていれば責任ある仕事を任される年代でもあります。50代は更年期などホルモンの変化から体の不調が起こりやすく、子どもが独立して夫婦ふたりの生活になったり、親の介護問題が起きたり。60代、70代は孫の誕生や、老化による自身の病気などがストレス要因になります」

男性に比べて家族の影響を受けやすい女性は、その分ストレスも感じやすいようだ(下グラフ)。

性・年齢階級別にみた悩みやストレスがある者の割合(12歳以上)

(平成28年厚生労働省・国民生活基礎調査を元に編集部で作成)各世代で女性の割合が高いが、仕事の責任が重くなり、育児や介護等、家庭での役割も大きく変化する30代〜50代は、男女共に割合が高い。
(平成28年厚生労働省・国民生活基礎調査を元に編集部で作成)各世代で女性の割合が高いが、仕事の責任が重くなり、育児や介護等、家庭での役割も大きく変化する30代〜50代は、男女共に割合が高い。

猛スピードで変化する社会、現代型の新ストレスも増殖中。

情報は振り回されるのではなく、利用したい。発信元の確かな情報だけ見るなど自分なりにルールを。
情報は振り回されるのではなく、利用したい。発信元の確かな情報だけ見るなど自分なりにルールを。

個人生活に起こる変化に加えて、現代社会ならでは、といえるストレス要因も少なくない。

「情報化社会になったことで、以前なら知らなくて済んだことが耳に入るようになり、不快感や居心地の悪さを感じる場面は増えています。またSNS上の広く浅い人づき合いは、信頼関係を築きづらいため、負担になりがちでしょう」

ハラスメントが法整備され守られるようになった一方、少し厳しく指導するとパワハラ、プライベートを聞くとセクハラなどといわれ、人間関係を難しくしている。

「心の自由や行動を制限されるような情報や人づき合い、価値観とは少し距離を取るように意識するだけでも、ストレスのかかり方が違ってくると思います」

昔はなかった、こんなストレス。

◎多すぎる情報量
インターネット上で誰もが情報を発信できる時代、嘘の情報に踊らされたり、期せずして自分の価値観を揺るがされたり。錯綜する情報に惑わされることがストレスに。

◎社会的ルールの増加
ふとした言動がハラスメントと捉えられたり、些細なマナー違反が大きなトラブルを引き起こしたり。細分化する社会ルールとその遵守に神経をすり減らす場面が急増。

◎SNS疲れ
ママ友などのグループLINEで必要以上に気を使う、フェイスブックやインスタグラムの「いいね」の数に一喜一憂する……。表面的な人づき合いに疲弊する人多数。

◎アンチエイジングの焦燥感
女性は年を重ねてもいつまでも若々しく、きれいであるべきという価値観がプレッシャーに。理想と現実のはざまで必要以上に抗うと、心の消耗につながることも。

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