名居酒屋に精通する太田和彦さんに教わる、とっておきの6軒は?
撮影・谷 尚樹、日置武晴 文・池田祐美子
女ひとり、名店にデビューするために。
日本各地の酒場を知り尽くした、居酒屋研究の第一人者として知られる太田和彦さん。今から約30年前、資生堂宣伝制作室でアートディレクターを務めていた頃、日本酒の魅力にはまり「居酒屋研究会」なるものを友人とともに発足。そこから居酒屋めぐりが個人的なライフワークともなり、独立後さらに活発化して今に至る。長年、数々の居酒屋を見続けてきた太田さんにとって、いい居酒屋の見つけ方とは?
「地方で居酒屋を見つける際、まず最初に見るのは外観の佇まいです。古い木造の一軒家で、ご家族でお店を営んでいる雰囲気があるところですね。店先に打ち水がしてあれば、気配りが感じられますし、開店前に地元の常連が数人並んでいれば、ここは間違いがないとわかる」
店内に入ったら、お店の人や店内の雰囲気を見つつ、さっとお品書きに目を通す。長年の経験で、30秒あればだいたいの察しがつく。
「あとは客層ですね。携帯をちらちら触りながら飲んでいる客の隣では飲みたくない。酒好きの品のいい紳士が落ち着いて飲んでいるのがいい」
店にある独特の雰囲気を壊さない気配りも大切だ。その場に順応して、店の居心地も大切にしたい。
大人の居酒屋は本来はふらりと覗いて入るのが粋だ。けれども人気店だとなかなかそういかない。
「もし予約を入れるなら、開店の時間に合わせるか、遅くとも18時までにするのがマナーです」
いい居酒屋とは、お店の人だけではなく、その場を共有するお客によっても雰囲気が作り上げられる。つまり自分も居酒屋の一部である点は、利用する側としてもわきまえておきたい点だ。
とした上で、太田さんは、最近はこんなことも考える。
「居酒屋研究会を立ち上げた時に決めた三原則が、“いい酒、いい人、いい肴”でした。今はさらにそれに、歴史が加わっているのが理想です。何代も続いている店は信用の証し。毎日通っても飽きない。うまい、安い、だけではないよさがあるんだろうと思います」
最近は、ひとりで居酒屋に訪れる30代、40代の女性客も増えている。
「店の雰囲気が引き締まり、ぐっと品がよくなりますよね。男は見栄っ張りだからね(笑)。女性がひとりで居酒屋へ入るとなると勇気がいる。そんな時は女将のいる店を選ぶといいです。女性同士気持ちを察してくれる部分もあるし、周りの男客から守ってもくれるから。波長が合ったら何度か足を運んで女将と仲良くなり、自分の居場所を持つのがコツです。僕が女性をお連れする時も、ひとりでもまた訪れられる店を考えて店選びをしますよ」
名店探しを助けてくれる、 太田さんの著書。
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