すっきりと清潔感あふれて、快適な引田家。すみずみまで掃除が行き届いているが、中でも掃除機がけは「ちょこっと掃除」のかおりさんと、「しっかり掃除」のターセンさん、2人が役割分担することで効果を上げている。
「私はマキタのターボを愛用しています」と、かおりさん。「コードレスのスティック掃除機で、軽量なので女性でも使いやすくて楽なんです。キッチン、玄関、洗面所など、汚れが気になるところを毎日ササッとかけています。ちょこっと掃除は気楽にできますね」
一方、ターセンさんはちょっとワケありのようで。
「実は家事で一番後からするようになったのが掃除機がけなんですよ。鼻が敏感なので、ずっと掃除機の排気の臭いがダメだった。でも2年半前にこの家に越してきたとき、今使っているダイソンにしたら排気がクリーンで臭いが全くない。しかも吸引力が強いからこれは使えると思って、やるようになったんです。週に1回、30分ぐらいしっかり掃除機をかけてます」
どんなにきれい好きな男性でも掃除はやっぱり面倒くさいという気持ちがどこかにある。それを払拭するには、これを使って掃除してみたいと思わせるような優秀な道具を揃えるのも一つの方法かも、とターセンさん。
「料理もそうなんだけど男ってツールが好きだから、気に入った道具に巡り合うと、それを使ってみたくなるんだよ」
「たしかにそうね。美しい北欧製の羽根ブラシを購入したときも、リビングの仏像とかいろいろほこり取りをやってくれるようになったもの」
「整頓好き」のターセンさん。引き出しはテーマ別に区分けされて。
かおりさんはとにかくマメに手を動かす。毎朝玄関を拭き掃除し、入浴したら体を拭いたタオルで浴室の水気をぬぐい、夜はその日使ったふきんでシンクの水気を拭きあげる。
「掃除をすると清々しくてすごく気持ちいいし、家が整っていると良い気が流れてくるように思うんですよね」
そんなかおりさんでもちょっと苦手にしているのが整頓。これが大の得意なのがターセンさんだ。
「僕は仕事でファイリングしてたし、デスク周りが散らかっていると仕事の効率が落ちるから、まずは整理整頓ありき。カーリンはしまうのは上手だけど、それを効率よくピックアップするのはうまくできないよね」
「そうなの。引き出しの中がごちゃごちゃになって相談したでしょ。薬、文房具とか引き出しごとにテーマを決めて収納する。でもカッターやはさみは文房具ではなく、ツール類としてまとめたほうが使いやすいって教えてもらって、なるほどって感心しちゃった」
ダイニングにあるチェストの引き出しは16個あるが、お出かけグッズ、ハンカチ類、カトラリーなどテーマごとに割り当てられ、生活動線に合わせて整然と収められている。仕事人間だった自分のスキルが役に立ってよかった、とうれしそうなターセンさん。
「とりあえずの引き出しっていうのを作ってあるんだよね。カーリンがすぐに処分できない展覧会の案内とか、書類はここに入れて、たまってくると引き出しごと引き抜いて、要る、要らない?って彼女に聞きながら仕分けしていきます。パパッとやるから早いよ」
家事をするとは生活者になること。何もできない男の老後は寂しい。
20歳で11歳年上のターセンさんと結婚したかおりさん。夫妻は今年で結婚生活40周年を迎える。
「『うちの旦那は何もやってくれないけど、ターセンみたいな夫がいていいね』ってよく言われるけれど、最初からこうじゃなかった。家庭を顧みない猛烈ビジネスマンで、専業主婦だった私には暗黒時代があります(笑)。一朝一夕ではダメだけど、40年かければなんとかなります。男の人も暮らしに根ざした生活者にならないと老後が寂しくなってしまいますからね」
これにはターセンさんも深く納得。
「僕がいろいろ失敗したりしてもカーリンは口を出さないでよく我慢してたよ。ほめて伸ばす方式だったから、こっちもやる気になれたんだよね」
「今ではターセンが家事をやってくれるのが当たり前になっているから、たまに旅行でいなかったりすると、あれもこれも自分でしなくちゃならなくて、やたらバタバタしてグッタリ疲れたり。ずいぶん助けられているんだって感じるの」
大切なのはお互いが歩み寄ること。そのためにはきちんと気持ちを伝え合うことだと、2人は言葉を合わせる。
「僕はすごく変わったし、生活者としての自信もついた。家事は夫婦の生活に軽やかなリズムを与えてくれるよね」
その言葉にうなずくかおりさん。家事を夫婦でシェアすることは、毎日を気持ちよく過ごす工夫であり、ともに暮らす人への思いやりなのだと。