くらし

最先端の技術が生み出す、新たなアートの楽しみ方。

最近よく聞く、メディア・アートって? スマホで美術品が見られるって本当? 芸術×ハイテクの最新事情を届けます。
  • 撮影・土佐麻理子 文・新田草子
AIに学習された自分の動きが、グラフィックに。 リカーシヴ・リフレクション ライゾマティクスリサーチ 人の動きのデータを学習したAIが新たな踊りを予測、グラフィックとなって投影される。
鑑賞者もステージへ。VRで味わう、浮遊感。 The Other in You 大脇理智+YCAM VRやCG、立体音響によってダンサーがいる舞台へと入り込む、映像インスタレーション。

例えば複数のプロジェクターが照射する光の絵画、コンピュータが人の動きを学習して音や映像を作り出すインスタレーションーー。そんな工学的・科学的技術を取り入れた「ハイテク」なアートが広がりを見せている。日本では「メディア・アート」などと呼ばれるこの芸術は、
「簡単に言うと、実用のために開発されたテクノロジーを表現に用いたアートのこと。伝統的な絵画や彫刻などとは異なる、一過性のアートと思われがちですが、実は美術史の中でひとつながりに捉えられるべきもの。とくにここ数年、より精度の高い芸術性にすぐれた表現が生まれています」とは、科学と芸術の交流を目指す文化施設、NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]の畠中実さん。とりわけヘッドマウントディスプレイを装着して仮想空間に入り込むバーチャル・リアリティ(VR)や、人工知能(AI)を使った作品がトレンドだ。
「デジタルで触覚を伝えるという、より新しい技術をVRアートに応用しようという動きも。テクノロジーと、音楽やダンス、建築などのアートがジャンルの枠も超えて融合し、互いに影響を与え合いながら新たな表現を獲得していくところが、メディア・アートの大きな特徴です」

最新技術を表現に応用するこうしたアートのほか、テクノロジーを駆使してすでにある芸術品を違う方法で鑑賞しようという試みも発展中。精細なデジタル画像で作品の裏側まで覗けたり、その場に行かずとも美術館の内部を見られたり。実際の展示物や建築物を見て歩くだけではない、多彩な楽しみ方が生まれている。

いずれにしてもアートと先端テクノロジーの関係は、いままでにない速さで進化中。作品の世界に五感ごと入り込んで楽しむ、そんなSFのような芸術体験ができる日も、そう遠くないのかもしれない。

畠中 実(はたなか・みのる)●NTTインターコミュニケーション・ センター[ICC]主任学芸員。’96年の開館準備から[ICC]に携わる。久保田晃弘さんとの共著に『メディア・アート原論』(フィルムアート社)がある。

NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]
2019年3月10日まで上の2作を含む「オープン・スペース 2018 イン・トランジション」を開催。
東京都新宿区西新宿3-20-2 東京オペラシティタワー4F
TEL:0120-144199
11時〜18時 月曜休 無料

『クロワッサン』983号より

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