くらし

太鼓、文字、演目など寄席の縁起担ぎを解説。│柳家三三「きょうも落語日和」

  • イラストレーション・勝田 文

前回、高座へ上がるときの“おまじない”についてお話をしました。今回は“縁起担ぎ”のお話をしましょう。

お客様商売ですから寄席や落語会に大勢ご来場いただくことを願って、さまざまな習慣があります。まず寄席の一日の始まり、開場時には「一番太鼓」でお客様をお迎え。“ドンドン ドンドドーン”と、大きな太鼓を威勢よく五分以上、長いときには十分ほど叩くのですが、これは太鼓が喋るようにイメージしながら叩くように教えられます。“どんどん どんと来ーい”、そう、大入りを願う縁起担ぎです。開演直前の「二番太鼓」では甲高い音の締太鼓が“ステツクテンテン ステツクテンテン”と鳴ります。これは“お多福来い来い お多福来い来い”……お客様を福の神に見立てているんですよ。こんなに欲張りな寄席の太鼓、終演時には急に薄情になり、その名も「追い出し太鼓」。これは“出てけ出てけ”と聞こえるようになんですって。

他にも寄席の看板やメクリ(高座上の演者の名を書いた札)などに使用される「橘流寄席文字」は、興行の雰囲気を盛り上げるだけでなく、筆太で余白を少なく、右肩上がりに書くことで、大入りで客席に空席が少なく、右肩上がりに日を追って入りがよくなるよう願いを込めて書かれています。現在も行われている真打昇進披露などのおめでたい興行では「寿限無」「松竹梅」など字面で縁起のいいネタや、お客様の足がどんどん寄席へ運ぶよう旅の噺、お客様のごひいきを“盗り込む”泥棒の噺、“大化け”を期して狐・狸が化ける噺などでお祝い日和を盛り上げますよ。

柳家三三(やなぎや・さんざ)●落語家。公演情報等は下記にて。
http://www.yanagiya-sanza.com

『クロワッサン』985号より

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