家系(いえけい)といえばラーメンで、N系といえば新幹線。渋谷系はJ-POPで、じゃあ津軽系、鳴子系、遠刈田(とおがった)系、弥治郎系、土湯系……とはなんでしょう? 答えは「東北の木地玩具の系統」。素朴な木のおもちゃたちが、渋い「系」ごとに置かれている展示スペースには晩秋の東北の風が吹いているよう。あぁ、旅情を誘うなぁ。
木のお椀を作っていた木地師と呼ばれる職人さんが、温泉客のお土産用におもちゃを手がけたのが始まり。独楽、輪投げ、ままごとの道具、それに「えじこ」と呼ばれる人形などろくろを使って木を削り、色を塗る技術が応用されている。細かく「系」で区分されているだけあって、土地ごとに形や色に差があるのが面白い。きっと、決められたサイズのお椀をせっせと削り出すときと、試行錯誤しながら独自カラーのおもちゃを作るときでは、木地師の顔つきは全然違うんだろうな。一方に日用品の心地よさ、他方に実用品じゃないものの豊かさ。
さてここにもうひとり、めちゃくちゃ豊かな人がいる。これらのおもちゃを収集した薗部澄(そのべきよし)さんだ。本業は、日本全国の暮らしの風景を撮影した写真家。そのかたわら、行く先々で手作りの民芸品やおもちゃを買い漁った。毎週火曜と木曜だけ公開される武蔵野美術大学民俗資料室の収蔵庫では薗部さんの膨大なコレクションを見ることができる。収集癖のある本誌担当M氏が嫉妬のうめき声を漏らした。
「こ、これは豊かだ…そして羨ましすぎる…」