中国のバブル崩壊が家計に響く? 知っておきたい金融・財政の話。
撮影・森山祐子 文・嶌 陽子
実は家計と密接に関わっている経済や財政。注目すべき動き、押さえておくべきキーワードを考える対談です。聞き手は、今年4月に節約をテーマにした小説を上梓し、「節約は個人的にもライフワークのひとつ」と話す作家の原田ひ香さん。答えるのは経営コンサルタントの坂口孝則さん。調達・購買業務を専門としながらも、経済や財政に関する幅広い知識を持っています。
原田ひ香さん(以下、原田) 実は私、主婦向け雑誌のウォッチャーでして。ここ10年くらい、いろいろな雑誌を買い集めては、気になるページを切り抜いてスクラップしているんです。
坂口孝則さん(以下、坂口) おお、そうなんですか。それは面白い。
原田 それを見ていると、ここ最近、すごく変化したなと思うことがあるんです。たとえば、家計管理に関する特集では、“食費は月2万円”というのが、長い間の定番でした。それが、数年くらい前から“月3万円”に変わってきています。もうひとつ変わったなと思うのが“働きたい”というテーマが扱われていること。こうした雑誌の場合、昔なら読者は専業主婦というのが前提で、夫の収入をいかにやり繰りするかという内容が基本でしたから。それから、ここ2〜3年の特集のトレンドは、“1000万円貯めたい”というもの。これも、以前は見られなかったですね。
坂口 なるほど。雑誌を定点観測するのは、世相を知る上で、とてもいいですね。冒頭からこんな話をして大変恐縮なんですが、コンビニに並んでいるアダルト雑誌ってあるでしょう。景気が良くない時は、表紙の女性がすごく明るい表情をしている。逆に景気が良い時は、ちょっと陰のある、アンニュイな表情なんです。アダルト雑誌の表紙を見ると、景気が分かるという説があるんですよ。
原田 そうなんですか! ちなみに、今のアダルト雑誌の表紙は?
坂口 これまではアンニュイな表情が多かったんですが、最近また明るい笑顔も増えてきたようです。
原田 私は、主婦雑誌をウォッチしたり、世の中を見たりしていると、景気が以前より少しは良くなっているんじゃないかなという印象はあるんですよね。ただ、テレビなんかを見ていると「景気が良くなった実感はない」と言っている人がほとんどですよね。実際のところ、どうなんでしょう。
坂口 実は、’80〜’90年代のバブル絶頂期の時も、内閣府が実施しているアンケート調査では、「景気が良くなった実感がある」と答えた人は非常に少なかったんですよ。そのことも含めて考えると、こうした意識調査は、あまり客観的な論拠にならないと思っています。むしろ、失業率などのデータを見たほうがいいと思うんです。仕事があるかどうかということは、景気を見る上でひとつの大きな指標になりますよね。今、完全失業率は2.5%前後で、上昇しているわけではない。この数値は決して悪くないとは思います。
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