「神楽坂で怪談というと、路地裏の非日常に迷い込んで妖を見せられるというイメージがあった。私はあえてそちらではないほうにしようと思ったんです。自分の日常と地続きにあるものをベースに、神楽坂に東京メトロの広告の集積所があるというトリビア的なネタを合わせて。電車の中吊り広告って身近な存在じゃないですか、それと神楽坂という場所を結びつけると、誰にとっても日常的な怪ということでできるのかなと」
そうして書き上げた1話目のあと、ぽつりぽつりと2年近くかけて、5話まで発表してきた。どれもが、思い込みや隣人トラブルというかたちをとって、まずは謎が立ち現れる。一見リアルな日常の風景だからこそ、じんわりと余韻を残す怖さがここにある。