周作は秋津温泉を5度訪れます。はじめは青臭いながらもまっすぐな男だったのが、年を追うごとに穢れていき、俗物の中年男に成り果てます。つまらない男に執着しているうちに17年という歳月が流れ、取り返しがつかないほど人生にくたびれてしまった女のやるせなさがとにかく泣ける! 松竹の十八番であるメロドラマの真骨頂と言えますが、そこにプラスアルファ、林光の音楽が常に鳴りつづけることで、ストーリーがじわじわ盛り上がり、まるで悲恋もののオペラを観ている気持ちにさせるほど、感情を高めていく演出が凄い。ラストシーンは圧巻です。
17歳から34歳までを演じ、まさに女優人生の集大成として、気迫みなぎる芝居を披露している岡田茉莉子。監督の吉田喜重とはこのあと結婚し、『エロス+虐殺』などアート系作品でコンビを組むようになります。そしてコケティッシュなお嬢さんから、30代は情念を秘めた女を演じるアーティスティックな女優へと見事に転身していきました。演じるだけでなく自ら映画をプロデュースする、非常に主体的な、カッコいい女優です。