庭師、草盆栽家に教わるベランダガーデニング入門。完成までの流れがわかります。
撮影・青木和義 文・大澤千穂
住む人と一緒に季節を重ねる、理想の庭ができるまで。
かねてより庭作りを楽しみにしていた佐藤さん夫妻。そのきっかけは庭ではなく、リノベーションにともなう室内の小さな変化だった。
「改修したことで玄関とリビングを隔てるものがなくなり、宅配などちょっとした来客時の目隠しがほしいなと。そこで玄関に置く鉢植えを、と相談に伺ったのが最初でした」
だがひとたび砂森さんの店を訪れてみると、野山の草花の飾らない魅力あふれるその空間に、心の奥にあったベランダガーデニングへの思いがふくらんだ。妻の陽子さんは自然豊かな地方で育ち、植物には親しみがある。
「両親も草花が大好き。父と母にも喜んでもらえる庭にしたいですね」
作庭にあたってのリクエストは玄関同様「目隠しとしての役目」。確かに窓の外には視界を遮るものがない。
「改修でサッシを一部すりガラスから全面透明に替えたら視界が開けて、外に緑がほしくなったのもあります」
そう語る二人に、砂森さんが出した解決策は「垣根を作らず、自然な形で枝を交差させる」というもの。
「背の高い植物を一列に並べてしまうと部屋から見た時に閉塞感がある。立ち木の枝でさりげなく目隠しをするようにしましょう」
植物は忙しい二人に合わせて、手のかからない山野草を中心に。山菜や実をつける植物など、口にして四季を感じられる“お楽しみ”も盛り込んだ。
「見頃の違う草木を選んでいるので、次々と花が咲き、一年を通して楽しめるはず。でもガーデニングはライフスタイルに合わせていくもの。生活の変化とともに別の草木に植え替えてもいい。二人で四季を足してください」
自然を間近に感じ、季節を足していく庭。夫妻も目を見張った、その作庭の「レシピ」やいかに。
1. 店からメインになる樹と下草を選んで運ぶ。
砂森さんの店から、植物を運び出す。今回の植物を大別すると、背の高い立ち木とその下草となる草花の2種。それぞれ前もって生産者に足を運び、おおまかに選んでおいたものから、さらに厳選。
「立ち木の苗木は枝の張り方が力強いか、草花は葉に勢いがあるかが選ぶ基準。枝ぶりも見ながらひとつずつ自分で選びに行きます」
すべて車に積んだら、出発進行。
2. 枝の様子を見ながらプランターの位置を決める。
現地では、プランターの位置決めから作業がスタート。ベランダは幅5.6m×奥行き1.3mという横に長い空間だ。
「目隠し効果はもちろん意識しますが、立体感も出したいので一列に植物を並べることはしたくない。メインの樹を入れて他の鉢の植物との枝の重なり具合や部屋からの眺め、室内からベランダへの動線も考えて配置を決めます」
位置が決まったら土の流出を防ぐ鉢底ネット、水はけのよい軽石を重ね、その上に樹を置き直す。
広告