くらし

『世界一孤独な日本のオジサン』著者、岡本純子さんインタビュー。「 孤独は、健康にも悪影響を及ぼす病です。」

おかもと・じゅんこ●1967年、神奈川県生まれ。コミュニケーション・ストラテジスト、「オジサン」(の孤独)研究家。読売新聞経済部記者などを経て、グローコム代表取締役社長。人材育成・研修、企業PRのコンサルティングなどを手がける。

撮影・中垣美沙

なんとも悲しいタイトルである。本書によれば、国際機関OECDの2005年の調査で、「社会集団における友人、同僚、他人と時間を過ごすことのない人」の割合は21カ国の男性中、日本が一番高かったという。ほかにも、「孤独の健康に対するリスクはアルコール依存症に匹敵」「日本の高齢者の男性単独世帯では、2割近くが会話の頻度は2週間に1回以下」など、衝撃的なデータが次々と提示される。

「数年前アメリカに住んでいた時に、孤独が現代病の一つとして毎日のように報道されるのを目にして、危機感を持ちました。タバコよりも肥満よりも孤独のリスクのほうが大きい、なんて。でも、日本に帰ってくると、書店には『孤独はかっこいい』『孤独を楽しむ』という趣旨の本が並び、孤独の悪影響を伝えるメディアはほとんどない。とても違和感を覚えました」

と、岡本純子さん。自身の父を含め、定年退職後の男性が家に閉じこもっているという話は嫌というほど聞いたし、周囲を見ても仕事熱心で無趣味なサラリーマンほど孤独に陥りやすいと感じ、「オジサン」に焦点を当てることに。

「女性に比べて男性、特に中高年のおじ様たちは、コミュニケーションに不器用なところがあります。世間話や共感が苦手で、会社という年功序列の“村社会”で長年生きてきたことで、他者とフラットな関係性を築きにくい。仕事をしているうちはいいけれど、忙しさにかまけて友人とも疎遠になり、家族からも邪魔者扱い。気づいたら心を通わせる人がいない、ということになりやすいようです」

本書では、そんな男性たちに向けた処方箋を提案するとともに、今年1月、政府が「孤独担当大臣」を新設して話題になったイギリスの取り組みを紹介。日本との温度差は明白だ。「慈善団体の活動など、草の根から始まっているイギリスの孤独対策は、日本でも参考にできるのでは」と岡本さん。

「日本は他の先進国に比べて高齢者の幸福度が低いというデータもあります。その根底には、人間関係の希薄さがあるような気がしていて。老後のためにお金を貯めるのと同様に、現役時代から人との繋がりという資産を築いておくことが大切。強がっていても、人は一人では生きていけませんから」

父親は、夫は、大丈夫だろうか?心配になった人は、本書を薦めてみてほしい。そして、女性も子どもも、誰もが孤独に陥る可能性があることも肝に銘じておく必要がありそうだ。

角川新書 820円

『クロワッサン』972号より

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※ 記事中の商品価格は、特に表記がない場合は税込価格です。ただしクロワッサン1043号以前から転載した記事に関しては、本体のみ(税抜き)の価格となります。

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