「一作ですべて完結していたのできっぱりお断りをしたんです。でも意思を超えたところで決まってしまって。ただ4作目で恩人の長谷部(安春)監督に撮っていただき、シリーズでいちばん好きな作品ができたのはうれしかったです」
その後、梶さんはテレビにも出演。名作『寺内貫太郎一家』では長女役でお茶の間に浸透する。
「“さそり”だし、暗い役が多い私にはホームドラマは合わないと言ったんですが(笑)。演出の久世光彦さんに明るい太陽みたいな役だけじゃドラマは成り立たない、と口説かれまして。でも久世さんは本当に素晴らしいディレクターで芝居への指摘も納得のいくものでした。全部で39本、1年近く出演したのは貴重な体験でした」
テレビ作品では『鬼平犯科帳』のおまさ役はいまだに印象深いものがあるという。
「あれは奇跡のようなドラマでしたね。中村吉右衛門さんという偉大な俳優さんを頭に28年間同じスタッフで取り組んだんです。映画と同様にキャメラも1台でじっくり撮影していたので、演じる時の緊張感も人一倍でした。本当に終わりたくなかった作品です」