「『命をいただいてるんだ』ということを強烈に実感しました。きれいにトレーに乗せられた牛肉を食べていると忘れてしまうけど、これは『牛の肉』なんだ、と。育てるうちに愛着が湧いて、屠畜するときはつらくて涙が出たけど、自分の牛の肉を初めて口に入れた瞬間、うわー、おいしい!って、ポジティブなパワーが湧き上がってきました。悲しみが感謝の気持ちに変わったんです。メス牛を通常よりも長期に肥育したことで、赤身のうま味がぎゅっと濃くなって、味もひいき目なしに最高でした」
育て方や肥育、熟成の期間など、納得のいく方法を試したことでおいしさの真理に近づいた。一方で、ヒレやランプなど人気部位しか売れないなど、現在の日本の畜肉をめぐる様々な問題にも直面した。
「部位や食べ方に関して、日本はまだまだ牛肉後進国。本業のコンサルタント業では、飲食店や卸売店に対して不人気部位の調理法を提案したりすることで、消費者が多種多様な牛肉に触れる機会が増えればと活動しています」