くらし

『炎の牛肉教室!』著者、山本謙治さんインタビュー。ブームだけど、日本はまだまだ牛肉後進国。

やまもと・けんじ●1971年、愛媛県生まれ。農畜産物流通コンサルタント、農と食のジャーナリスト。食のコンサルティングを行う「グッドテーブルズ」代表。ブログ「やまけんの出張食い倒れ日記」運営。著書に『激安食品の落とし穴』など。

撮影・森山祐子

熟成肉に赤身肉。空前の牛肉ブームのいま、山本謙治さんが刊行したのが「牛肉について知ってほしいことを凝縮した」という本書だ。「希少というイメージの黒毛和牛は、日本の肉用種の中で最もありふれた品種」「サシが入れば入るほど、うま味は少なくなる」など、冒頭から次々と飛び出す真実に、私たちは牛肉について驚くほど無知だったことに気づかされる。

「A5のような現行の格付けは、肉質(霜降り度合い)と歩留まり(一頭からどれだけの肉がとれるか)が評価の基準で、必ずしもおいしさとイコールではないんです。じゃあ本当の牛肉のおいしさの方程式って? そこを明らかにしたいという思いがあって、ずっと牛や畜産業界と向き合ってきました」

本書の見どころのひとつは、山本さんが、岩手県で短角牛のオーナーになり、それを肉にして食べ、売るまでの体験を綴った章だ。

「『命をいただいてるんだ』ということを強烈に実感しました。きれいにトレーに乗せられた牛肉を食べていると忘れてしまうけど、これは『牛の肉』なんだ、と。育てるうちに愛着が湧いて、屠畜するときはつらくて涙が出たけど、自分の牛の肉を初めて口に入れた瞬間、うわー、おいしい!って、ポジティブなパワーが湧き上がってきました。悲しみが感謝の気持ちに変わったんです。メス牛を通常よりも長期に肥育したことで、赤身のうま味がぎゅっと濃くなって、味もひいき目なしに最高でした」

育て方や肥育、熟成の期間など、納得のいく方法を試したことでおいしさの真理に近づいた。一方で、ヒレやランプなど人気部位しか売れないなど、現在の日本の畜肉をめぐる様々な問題にも直面した。

「部位や食べ方に関して、日本はまだまだ牛肉後進国。本業のコンサルタント業では、飲食店や卸売店に対して不人気部位の調理法を提案したりすることで、消費者が多種多様な牛肉に触れる機会が増えればと活動しています」

スーパーで個体識別番号を検索して牛肉を選ぶ方法、山本さん推薦の店リストなど、実践的な情報も満載。おいしい牛肉に出合うためのガイドとしても活用したい。

「スーパーでも、『この肉の牛の品種は何ですか?』などと聞いてみてください。大切なのは、ブランドに惑わされずいろんな牛肉を試して知識をつけ、自分の好みを知ること。消費者が変われば、格付け偏重じゃない評価や食べ方の多様性など、市場も変わり、牛肉の楽しみがもっと広がるはずです」

講談社現代新書 800円

『クロワッサン』969号より

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