はなから「間違えるかも」と宣言されることで、客は半ばそれを期待するようにドキドキ待つことに。取り違えを客同士で解決したり、まあいいかと鷹揚に構えたり。満足度の高い3種のメニューは均一料金だし、「まちがえる」の「る」が転んだ店名や茶目っ気ある舌出しマーク(通称“てへぺろ”)というデザインも絶妙。お膳立てが見事なおかげで、働く人も和やかに、訪れた客に寛容のスイッチが入る。
「この料理店は大成功して、いろいろな感動や共感も生みましたが、あくまで非日常です。現実に戻れば、認知症の本人も介護する家族も支える福祉の専門家もたいへんなことは変わらない。日常のほうが圧倒的な濃度ですから。それでも、ささやかな非日常が、本人や家族にハッピーな時間をもたらし、そのままを受け入れてくれる客と店のおおらかな空気に、ここにいていいんだと感じられたのです」