くらし

暮らしの安心感に繋がる、「衣食住」の自給自足。

  • 撮影・青木和義

エネルギーも食も、自ら作り出すことで不安が拭える。

奥から時計回りに、吉宏さん、長男の大樹君、次男の悠樹君、妻の直子さん。子どもたちは藤野に来て、外を駆け回って遊ぶのが大好きになった。

大和さんと共に羊を飼育する中込(なかごみ)さん宅を訪れると、吉宏さんと妻の直子さん、息子の大樹君と悠樹君が大きなダイニングテーブルに集まっていた。テーブルにベンチ、庭のウッドデッキなどは吉宏さんの手作り。また、暖をとるのはエアコンではなく薪ストーブ、さらに自家発電用のソーラーパネルを設置するなど、中込家は住まいの自給に取り組んでいる。
「子育てをするのにいい環境を探していたところ、藤野の『よろづ屋』の活動を知って、東京から移住を決めたんです。子どものことを考えて、食べ物や洗剤も極力自然素材のものを選んでいましたし、せっかく里山に家を建てるならできるだけ自然に近いかたちにしたいと思いました」
と吉宏さん。

見晴らしのいい高台に立つ中込さん宅。屋根には、ソーラーパネルと太陽熱温水器が設置される。設計を担当したのは池辺潤一さん。

ダイニングの照明など全体の約半分の電力は「藤野電力」で設置したソーラーパネルによる太陽光発電で自給し、残り半分は電力会社から。「藤野電力」は「トランジションタウン」の一環で、地域全体で自然エネルギーの推進を目指すもの。
「東京で東日本大震災を経験したことで、過剰に電力を使っている生活に気づいたんです。それで、少しでも消費電力を減らそうと、炊飯器を土鍋に変えたり、ウォシュレットを水圧式にしたり。太陽光発電を始めて電気のありがたみも痛感したし、万が一、電力会社からの供給が止まっても大丈夫と思えるようにもなりましたね」

(左)冬は、薪ストーブだけでも部屋全体がしっかり暖まる。(右)太陽光発電した電力は、照明やスマートフォンの充電に使用。

生ゴミを土に返すためのコンポスターや、排水を浄化するバイオジオフィルターを活用するなど、資源を無駄にしないための循環の仕組みにも力を入れる一方で、庭の畑では野菜を作り、近隣の住民と共同で鶏を飼って卵を分け合う「地域チキン」の活動にも参加。「食」の自給にも挑戦している。夫婦揃って、東京にいた時とは180度考え方が変わったという。
「あの頃は、例えば断水になっただけですごく不安感がありました。でも今なら、雨水でも井戸水でも煮沸すればなんとか飲めるかなと思える。不測の事態が起きても、薪や羊の毛で暖をとれるし、土地があれば野菜が作れるし、本当にいざとなったら羊や鶏を食べちゃえばいい。そうやって、何があってもなんとか生きていける。お金を持ってることとは違う安心感を、今はすごく感じますね」(直子さん)

二人の子どもたちも、吉宏さんと一緒に薪ストーブに火をおこし、木を使って遊び道具を作る。小さな自給自足の芽が、生きる強さを養っていく。

「地域チキン」プロジェクトの鶏。各家庭の残飯をエサにすることも。

『クロワッサン』966号より

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