夫婦揃って失業、残高マイナス200万円。お金のピンチを乗り切るコツ。
撮影・松尾成美 文・神舘和典
「行内にあなたのポジションがなくなりました」
2008年11月、花輪陽子さんは外資系の投資銀行での職を失った。
「その2カ月前にリーマン・ブラザーズが破綻。日に日に会社の経営が悪化して、居場所がなくなりました」
結婚直後。新婚旅行先のモルジブから帰国すると、手の打ちようのない状況だった。時を同じくして夫の会社も倒産。リーマンショックで夫婦ともども失業。幸せの絶頂から奈落へ。
「まず、家賃20万円の部屋から13万円の部屋へ引っ越し、年間60万円かかっていた保険を解約。夫の小遣いは、ランチ代と交通費も含めて月5万円程度を現金支給で。それを機に猛勉強し、ファイナンシャルプランナーの資格を取得。家計を立て直しました」
現在は夫の転勤でシンガポール在住の花輪さんだが、結婚前にも2度、“個人的経済危機”を体験している。
7枚のカードローンで残高マイナス200万円。
「このカードはお使いになれません」
ブランドショップのレジで言われ、花輪さんはうつむいた。何度同じ体験をしても、恥ずかしさに慣れはない。
「最初の散財期は学生時代です。カリフォルニア州の短期語学留学中にカードを使いまくり、1カ月で30万円のマイナスになりました」
帰国後、時給の高い家電量販店で携帯電話のキャンペーンガールのアルバイトを見つけ、数カ月で返済した。
「2度目の散財は独身OL時代。服や靴やバッグで200万円のマイナスです。渋谷のお気に入りのショップで、スタッフさんに勧められるまま買い続けました。クレジットカードは7枚持っていましたけれど、そのうちの何枚かは限度額まで使いました」
残高がマイナス200万円の頃、アメリカのファイナンシャルプランナー、スージー・オーマンさんの著書『幸せになれる人 バカな人生を送る人のお金の法則』と出合い、一念発起。
「リボ払いの残高がマイナス2000万円になり、ハイウェイでの罰金も払えなくなった著者がV字復活する実話です。他人事とは思えませんでした」
花輪さんの生活は一変する。食事は毎日、納豆ご飯とみそ汁、百貨店近くの道は歩かない……。節約を徹底して1年で200万円を返済した。その苦労と経験が現在の花輪さんを支えている。
『クロワッサン』942号より
●風呂内亜矢さん ファイナンシャルプランナー/SE、不動産会社勤務を経て現職。最新刊は『できる女は「抜け目」ない』(あさ出版)。