【俳優・杉咲 花さんに聞いた】仲良くない距離が心地いい新感覚の占いミステリー ──ドラマ『クロエマ』
撮影・シム・ギュテ スタイリング・中澤咲希 ヘア&メイク・宮本 愛(yosine.) 文・兵藤育子
ドラマ『冬のなんかさ、春のなんかね』では、奔放な主人公の心の機微を細やかに演じた、杉咲花さん。ジャンルや雰囲気は異なるが、『クロエマ』も今泉力哉監督とのタッグで、撮影は本作が先だったそう。
「撮影が始まる前『クロエマ』について監督と話すなかで、『温度の低いところがいいなと思った』とおっしゃったのが印象的でした。たしかに、クロエとエマはすごく仲がいいわけではないし、強い絆で結ばれているわけでもなく、ひょんな出会いからお互いの人生に触れることになります。ときにケンカをしたり、力を合わせたりする白黒のつかない関係性を、今泉監督がどんなふうに描くのかワクワクしました」
杉咲さん演じるエマは恋と仕事と家を一度に失うが、偶然が重なって、謎めいた資産家クロエ(多部未華子さん)の屋敷に居候させてもらうことに。クロエの特技を生かして占いの店を始めたところ、さまざまな悩みを抱えた相談者が来訪。あるときは好奇心むき出しに、あるときは半ば巻き込まれながら、ふたりは相談の裏に隠された謎を探っていく。
「エマは焦っていても、あっけらかんと“人生詰んだ”と言ってしまえるくらい軽やかで、社交性も愛嬌もあるけれど、勝手に人の家の庭で野宿をしてしまうようなネジの外れたところもあるんです(笑)。クロエさんは他者と適度な距離を保とうとしているようで、実は興味に満ちている。占いも希望が持てて、未来は自分の行動次第で変わるというメッセージからも、結局は人間を信じていることが伝わってくるんです」
念願だった今泉監督との仕事が2作連続で実現した杉咲さんは、監督の魅力を次のように語る。
「ずっと迷っているところが素敵だなと思います。たとえばエマが使うお財布ひとつでも、撮影のギリギリまで選択肢のなかで迷い続ける。自分が作る世界に対して、これ以上ないくらい向き合って、すべてを背負いながら何が一番美しいのか真剣に考えている姿が印象的でした」
占いを手がかりに謎解きしながら、ふたりの関係性も少しずつ変わっていくミステリー。といっても、謎や問題が必ずしもクリアになるわけではないのも、現実っぽい。杉咲さんもパフェを食べながら「やれやれ」とひと息つく、各話のラストシーンがお気に入りだそう。
「不安は消えなくても、自分を労う時間の豊かさを感じられて、励まされました。謎が解けても解けなくても、この先も自分なりの戦い方をしていくのだろうと思わせてくれるような、力強さのある作品になっていたらうれしいです」
『クロエマ』
『逃げるは恥だが役に立つ』が一大ブームとなった、海野つなみさんの最新連載作品を実写ドラマ化。占いで謎に迫る、コメディタッチのミステリー。Prime Original新ドラマシリーズとして、世界独占配信。
監督:今泉力哉
脚本:今泉かおり
原作:海野つなみ
出演:杉咲花、多部未華子 Amazon Prime Videoにて配信中(全5話)。
©海野つなみ/講談社
©2026 WOWOW
『クロワッサン』1168号より
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