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『トロイの女たち』パット・バーカー 著 北村みちよ 訳── トロイア戦争後を女性を主人公に描く

文字から栄養。ライター・瀧井朝世さんの、よりすぐり読書日記。

文・瀧井朝世

『トロイの女たち』 パット・バーカー 著 北村みちよ 訳 早川書房 4,510円
『トロイの女たち』 パット・バーカー 著 北村みちよ 訳 早川書房 4,510円

古典『イリアス』に描かれたトロイア戦争を、女性の視点から語った『女たちの沈黙』の続篇。こちらはエウリピデスが描いた同タイトルの悲劇も下敷きにしているという。

主人公は前作と同じく、トロイア戦争でギリシア軍に囚われ、武将アキレウスの「戦利品(奴隷)」となったブリセイス。彼女はアキレウスの子を宿すが、死を予感した彼はブリセイスを自分の側近、アルキモスと結婚させ、その後死去。ブリセイスは奴隷となった他の女たちを気にかけつつ暮らしている。ある日、あえて野ざらしにされていた元トロイア王の遺体が何者かによって埋められており、武将ピュロスが激怒。犯人捜しが始まるが、男たちが怪しむ相手は男ばかり。女たちの存在は男の目に入らないのだ。だが、ブリセイスには心当たりがあった……。

ピュロス目線で有名な「トロイの木馬」の場面があったり、トロイア人だがギリシア軍に仕える預言者の視点パートがあったりと、重層的な構成。アンドロマケやカッサンドラなど聞いたことのある名前も続々登場して、古典が立体的に見えてくる。ブリセイスはじめ女性たちの、過酷で苛烈な運命と対峙する強さに胸打たれる。

  • 瀧井朝世 さん (たきい・あさよ)

    ライター

    著書に『ほんのよもやま話〜作家対談集〜』『偏愛読書トライアングル』など。

『クロワッサン』1167号より

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