『旅から学ぶ観光地誌学』飯塚 遼、太田 慧、矢ケ﨑太洋、菊地俊夫 著──知っている観光地のまた違った景色
文字から栄養。ライター・瀧井朝世さんの、よりすぐり読書日記。
文・瀧井朝世
ぱらぱらっとめくった時に、ニュージーランドの酪農景観と東京近郊の酪農景観の写真が目に入った。前者は牧草地が広がりのどかな雰囲気。後者は牛舎に牛が並べられて窮屈そう。同じホルスタイン種の乳牛なのに違いが生じる理由を考えると、農業空間や消費者人口、市場規模の違いが挙げられる……などとあり、興味を惹かれて買ってみた。ちなみに地誌学の知識はまったくない。本書は静態地誌、動態地誌、比較地誌(その三つが何かは本書で説明されている)を使って観光客が多く訪れる地域が考察されており地理の授業の面白さを思い出した。
たとえば、ベルギーはチョコレートが有名だが、それはコンゴを植民地化したため交易でカカオの取り扱いが増えたから、という事実を思い出したり、ロサンゼルスと東京の観光地としての相違点や、草津とイギリスのバースの温泉観光地としての比較に「なるほど」と思ったり。
観光地としてどのような変遷をとげたかなど、その地域の歴史も地理的特徴も人口も暮らしも全部含めて眺めてみると、よく知っている観光地でも、また違った景色が見えてくる。もっといろんなケースを読みたくなった。
『クロワッサン』1167号より
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