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【白央篤司が聞く「自分でお茶を淹れて、飲む」vol.14】藤野貴子(菓子研究家)サブレから漂う香りとともに——カジュアルに、気取らずにお茶とつきあう

ペットボトルは便利だけど、「自分でお茶を淹れて、飲む」行為には、かけがえのない良さがあるように思えてならない……。「生活にお茶は欠かせない」人たちは、どんな風にお茶と付き合っているのだろうか? 『台所をひらく』などの著作で知られるフードライターでコラムニストの白央篤司さんが「お茶」をテーマにインタビューする連載第14回は藤野貴子さんのお話です。

取材/撮影/文・白央篤司

菓子研究家 藤野貴子(ふじの・たかこ)さん。1988年、東京都生まれ。フレンチシェフと料理研究家の両親のもと、幼少期から料理と製菓に親しんで育つ。大学卒業後に渡仏、パティシエールとして研鑽を積む。現在は教室を主宰しながら、菓子研究家として雑誌やテレビなどで活躍する。最新刊は「ひんやり大人のアイスデザート」(マイナビ出版)<br><a href="https://2castor.com/" target="_blank">CASTOR & Laboratory</a><br><a href="https://www.instagram.com/taquako41/" target="_blank">Instagram:@chiakisakamoto</a>
菓子研究家 藤野貴子(ふじの・たかこ)さん。1988年、東京都生まれ。フレンチシェフと料理研究家の両親のもと、幼少期から料理と製菓に親しんで育つ。大学卒業後に渡仏、パティシエールとして研鑽を積む。現在は教室を主宰しながら、菓子研究家として雑誌やテレビなどで活躍する。最新刊は「ひんやり大人のアイスデザート」(マイナビ出版)
CASTOR & Laboratory
Instagram:@chiakisakamoto
藤野貴子さんが焼いたサブレは花のような形。とてつもなくよい香りが食欲をそそる
藤野貴子さんが焼いたサブレは花のような形。とてつもなくよい香りが食欲をそそる

東京・小伝馬町にある藤野貴子さんのアトリエを訪ねたら、ちょうどサブレが焼き上がったところだった。

「明日の教室用の試作なんですよ」

デイジーのような形をしたサブレからいい匂いが漂う。数枚、味見に分けてくれた。香ばしくて、いきいきとした魅力的な甘さが噛むうち舌から体に広がり、手が止まらなくなる。取材そっちのけで食べる私に苦笑しながら、淹れてくれた紅茶は「MUSICA TEA」のものだった。

兵庫・芦屋に本拠地を置く「MUSICA TEA」。藤野さんは渋谷ヒカリエにある「d47 design travel store」で買うことが多いそう
兵庫・芦屋に本拠地を置く「MUSICA TEA」。藤野さんは渋谷ヒカリエにある「d47 design travel store」で買うことが多いそう

インドネシア「ブキットサリ茶園」のそれは、「えぐみが無くて、クリアでサラッとしている。それでいてうま味のあるのが気に入っている点」と教えてくれた。ああ、飲みやすい紅茶だ。菓子のタイプを選ばず、何にでも寄り添ってくれそうな素直な味わいだった。

実際、菓子教室のときは生徒さんたちに紅茶を出している。

「スケルトンがかわいくて」買い求めたティーポットは「イッケンドルフ ミラノ」のもの
「スケルトンがかわいくて」買い求めたティーポットは「イッケンドルフ ミラノ」のもの

「普段は……茶葉やお湯の量も適当にザッと淹れることも多いんですが、教室のときはきちんとパッケージの表示に従って淹れてます(笑)。うん、いや、ちゃんとおいしく飲みたいときは自分用でもそうするかな」

えへへ、と笑って言う感じに気取りがまるでなく、親しみやすい。藤野さんと紅茶のつきあい方もカジュアルそのもの。家族はコーヒー党が多い中、高校時代から紅茶が好きだった。大学生の頃はイギリス式のアフタヌーンティーに憧れ、たまに背伸びしてホテルのラウンジで楽しんだことも。

「その頃からだんだん好みが分かってきて。苦みが少なく、軽くてさわやかな紅茶が好きですね。決まりの量より少な目にして、ちょっと薄めで飲むのが好み。ただ『必ず茶葉はこれ!』というのはなく、アソートのティーバッグを気分に応じて楽しんだりもしていますよ」

「MUSICA TEAは毎年のクリスマスブレンドも楽しみ」と藤野さん
「MUSICA TEAは毎年のクリスマスブレンドも楽しみ」と藤野さん

毎日飲むほどの紅茶党でもないんです、と言葉を続ける。

「朝に一杯、何かしらを飲むんですよ。その日の天気や体調に合うものを。紅茶やほうじ茶、煎茶の日もあるし。これからのジメッとした季節ならアイスコーヒーが飲みたくもなるし」

「朝が弱くて、起きてからベッドで40分ぐらいは起きられず、ウダウダしてしまうんです」と笑う。だが一日しっかり働くために、朝食は抜かさない。そして何か一杯、自分のために飲み物を用意する。「それによって今日の気分が左右されることもありますね」。紅茶にせよ煎茶にせよ、藤野さんにとって朝の一杯はスターターとして重要なもののようだった。

倉敷「アートスペース油亀」で出合ったお気に入りのカップ
倉敷「アートスペース油亀」で出合ったお気に入りのカップ

愛用のカップは、愛媛で作陶を続ける作家・石田誠さんのものだった。シンプルでクールだけれど、表情は温かい。そしてサイズ感はデミタスよりやや大きめぐらいの感じ。

「ちょっとずつ入れて飲みたいんです。手に取って軽いのも気に入っていて」

手になじむ大きさや重さは本当に人それぞれで、取材を重ねるたび面白いものだと思う。仕事柄、毎日なんらかのお菓子が身近にある藤野さん。お気に入りのお茶うけなどはあるだろうか?

つややかな琥珀色に目が和む
つややかな琥珀色に目が和む

「私、ストレートティーだとおせんべいや和菓子も合わせちゃうんですけど、ミルクティーだったら洋菓子かなあ。シュークリームとか、生クリームを添えたガトーショコラとか」

クリームでねっとりした口の中は、ストレートティーよりもミルクティーのほうがすっきりする感覚がある、とも教えてくれる。これは取材後に実際試してみたら「なるほど!」と納得した。

「ミルクティーやストレートティー、それぞれに合うお菓子とか、茶葉の選び方に産地によっての違いのことなど、もっと紅茶のこと、知っていきたいと思っています」

夏にはソーダ水に茶葉をひと晩漬けてティーソーダを楽しむことも。ミントをたっぷり使う特製フレッシュハーブティーもお気に入り。「市販のミントだとどうしてもえぐみを感じるんですが、いつもお願いしている農園さんのミントで作ると、やさしい甘みが出てとてもおいしくて」と目を細めた。

先のガラスのティーポットいっぱいにミントが入ったら、目にも涼やかだろうな……。ハーブティーに藤野さんが合わせる真夏の茶菓子も気になる。

暑い時季にまたぜひ、取材させてください。

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