『山尾悠子偏愛アンソロジー 構造と美文』山尾悠子 編──偏愛アンソロジーから見えてくる好みの傾向
文字から栄養。ライター・瀧井朝世さんの、よりすぐり読書日記。
文・瀧井朝世
作家、山尾悠子が偏愛する国内外作品を集めたアンソロジー。
選ばれた作家はボルヘスやバラード、ラヴクラフトや、(私も大好きな)ブッツァーティ、あるいは金井美恵子や澁澤龍彦、塚本邦雄、多田智満子など多数。
どの作品も短いので、隙間時間に読むことに適しているといえる。ただ、ユルスナールの「斬首されたカーリ女神」とシュオッブの「悲劇詩人 シリル・ターナー」という、怒りを抱く神もしくは神の血を引く者の顛末が語られる二編が並ぶなど、掲載順序も考え抜かれている印象なので、順番に読むのがよいかも。
ゴシックやファンタジーというよりは、神話的な世界観を感じる短篇が多い印象。幻想文学のなかにもいろんなバリエーションがあるのだなと、いまさらながら思ったのだった。「編者あとがき」によると、アンソロジーのために好きな作品をリストアップしたところ一定の方向性があったため、自分は“どうやら〈構造のある小説〉および〈極度に人工的な文章、スタイル〉の二方向が好みらしいのだ”と気づいたそうだ。自分の好みの傾向をいま改めて把握するために、個人的アンソロジーを妄想したくなった。
『クロワッサン』1166号より
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