【作家、演出家、俳優・松尾スズキさんに聞いた】それぞれの正義のバトル。今こそ響く、名作舞台──『カッコーの巣の上で』
撮影・シム・ギュテ 文・黒瀬朋子
唯一無二のエンターテインメントを作り、先日、菊田一夫演劇賞を受賞した松尾スズキさん。このたび、『カッコーの巣の上で』を演出する。ケン・キージーの小説をデール・ワッサーマンが脚色し、たびたび上演された舞台で、1975年にはジャック・ニコルソン主演で映画化され、不朽の名作と謳われた。松尾さんも繰り返し観た好きな映画だという。
「俳優の芝居が皆、とにかく素晴らしいんです。ミロス・フォアマン監督の映画は普通じゃない人が登場して、周囲が魅了されたり反発を覚えて、不幸になっていく話が多い。僕も学校で変わり者扱いをされて疎外感を抱いた経験があるので、つい感情移入してしまいます。『カッコー〜』は、いつか自分も手がけてみたいという思いがありました」
主人公は、刑務所の強制労働を逃れるために病を偽り、精神病院に送られてきたマクマーフィー(間宮祥太朗)。明るく奔放な彼に感化され、入院患者は次第に活力を得ていくのだが、院内は看護婦長のラチェッド(江口のりこ)により、徹底的に管理、統制された世界だった。
「人間の抑圧と支配の物語です。マクマーフィー役はコミュニティの中で象徴的な存在になるので突出したものが必要。間宮くんはただの二枚目ではなく、どこか異質なムードがあり、ぴったりだと思います。江口さんは、たとえ極論でも『江口のりこの言うことは正しい』と思わせてしまうようなカリスマ性がある。二人の対峙は面白くなると思います」
1960年代のアメリカが舞台だが、ネットで互いに監視し合い、異質なものを叩く排他的なムードが広がる今にも響くところがありそう。
「ネットを見ていると、同調圧力の中に進んで入っていく人もいるように感じます。マクマーフィーのように『人は完全に自由だ』と言う人を『お花畑』と揶揄したり。僕は完全に自由だったわけではないけれど、割合自由に生きてきたので、自由を自ら手放している人を見ると滑稽というか、不思議な感じがしますね」
俳優の演技をじっくり見せたいと、今作では「達者な人を集めた」そうだ。坂東龍汰さんや黒田大輔さんら、松尾組初参加者もいれば、徳井優さんや金子清文さんら30年ぶりのタッグも。松尾さんは近年、大学で教えたり、「コクーン・アクターズ・スタジオ(CAS)」を主宰するなど、若手の育成に力を注いでいる。
「お金にならないことに身を削って熱くなる人たちと接して、尊いなと。僕にもそんな時代はあったし、舞台の楽しさを思い出しました。CAS出身の吉田ヤギや中野亜美らも出演するので、注目していただけたら!」
PARCO PRODUCE 2026『カッコーの巣の上で』
脚色:デール・ワッサーマン
翻訳:髙田曜子
演出:松尾スズキ
出演:間宮祥太朗、坂東龍汰、近藤公園、山口航太、皆川猿時、江口のりこほか。
東京公演:6月7日(日)〜29日(月)PARCO劇場 愛媛、大阪、北九州、仙台公演あり。
『クロワッサン』1166号より
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