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『珍獣に合鍵』早乙女ぐりこ 著──男社会で働く女性の鬱屈をユーモラスに

文字から栄養。ライター・瀧井朝世さんの、よりすぐり読書日記。

文・瀧井朝世

『珍獣に合鍵』 早乙女ぐりこ 著 角川書店 2,035円
『珍獣に合鍵』 早乙女ぐりこ 著 角川書店 2,035円

主人公は鍵岡奏、職業は国語教師、中高一貫の男子校に勤める三十四歳。職場は圧倒的に男性が多い。着任当時から男子生徒に対しては護身のために実年齢より高く年齢を偽り、服装はモノトーン、声は低く、女性性を見せないよう心掛けている。しかし、男性教師の中には、名前でなく雑に「姐さん」と呼んでくる輩もいる。

幼い頃から料理好きの母親にせっせと食べさせられ「かなでぶ」とからかわれていたが、大学で一人暮らしとともにダイエットを開始、今でも筋トレと食事管理は怠らない。新聞記者の友人女性とルームシェアしており、互いに男社会で働く身であるが、話せない内部事情もあるため愚痴全部を吐き出せるわけではない。マッチングアプリを始めてみるが、よさげな人はなかなかいない。しかし──。

怒りを覚えるほどじゃないけれど、「なんだかなー」というシチュエーションの描き方が絶妙。ユーモアも交えながらも不快さが伝わるし、不快に思う自分が不遜ではないかという冷静さも感じられて受け入れやすい。登場人物みな、いい意味でも悪い意味でも味わい深くてそれぞれとの絡みが面白い。しかも終盤には痛快な場面があり、ラストは爽快感が。面白かった!

  • 瀧井朝世 さん (たきい・あさよ)

    ライター

    著書に『ほんのよもやま話〜作家対談集〜』『偏愛読書トライアングル』など。

『クロワッサン』1165号より

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