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『歌川広重「名所江戸百景」最後の挑戦』太田記念美術館──世界に衝撃を与えた広重の江戸

青野尚子のアート散歩。今回は、浮世絵の名品を多数所蔵する東京・原宿の太田記念美術館で開催される、歌川広重の展覧会。「名所江戸百景」は西洋の画家たちに影響を与えたことでも知られる。

文・青野尚子

歌川広重「名所江戸百景 亀戸梅屋舗」(前期)
歌川広重「名所江戸百景 亀戸梅屋舗」(前期)

歌川広重が幕末の江戸を描いた「名所江戸百景」。その全120点がおよそ8年ぶりに公開される。浮世絵の名品を多数所蔵する東京・原宿の太田記念美術館での開催だ。

「名所江戸百景」は広重の手による118点に広重の没後、二代広重が描いた1点と目録から構成される。その中には日本橋や浅草寺、桜の名所・飛鳥山など、今もよく知られるスポットもあるけれど、建物が建て替えられたりして景観が大きく変わったところも多い。緑豊かなエリアが、家がぎっしりと立ち並ぶ住宅街へと変貌したところもある。黒船来襲を受けてお台場を建設するために削られた御殿山を描いたものも。時代背景やその流れを感じさせる。

この「名所江戸百景」は西洋の画家たちに影響を与えたことでも知られる。「大はしあたけの夕立」や「亀戸梅屋舗」はゴッホがその周りに漢字のような文字をちりばめて模写した。太鼓橋が描かれた「亀戸天神境内」は睡蓮を描いたモネの絵にインスピレーションを与えたといわれる。広重は手前のものを極端に大きく描く「近像型構図」や、端に人物などをはみ出させる大胆な構図で革新的な画面を生み出した。

広重は還暦を過ぎてから62歳で没するまでの3年間でこの「名所江戸百景」を描いている。高齢になっても新しい表現に挑戦した生き方にも勇気をもらえる展覧会だ。

歌川広重「名所江戸百景 水道橋駿河台」(後期)
歌川広重「名所江戸百景 水道橋駿河台」(後期)

『歌川広重「名所江戸百景」最後の挑戦』

歌川広重「名所江戸百景 浅草田甫酉の町詣」(前期)
歌川広重「名所江戸百景 浅草田甫酉の町詣」(前期)

4月15日(水)~6月14日(日) 太田記念美術館

鮮やかな色が残る優品が展示される。現代のスマホのような縦長の構図にも注目したい。5月10日までの前期と5月15日からの後期で全点展示替えされる。

太田記念美術館(東京都渋谷区神宮前1-10-10) TEL:050-5541-8600(ハローダイヤル)。10時30分~17時30分 月曜、5月7日、5月12日~14日休(5月4日は開館) 入館料一般1,200円ほか
  • 青野尚子 さん (あおの・なおこ)

    アート・建築関係のライター

    著書に『超絶技巧の西洋美術史』(池上英洋さんとの共著、新星出版社)など。

『クロワッサン』1163号より

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