【シアトルの旅③】雄大な自然、素晴らしいワイナリー、美味しいグルメが満喫できるシアトルへ——見どころたっぷりのシアトルで、観光もスポーツも存分に楽しむ
写真・文 斎藤理子
シアトルといえばパイク・プレイス・マーケット。ただ見て歩くだけでも心躍る楽しい場所です
シアトル観光では絶対に欠かせないスポットが、《パイク・プレイス・マーケット(Pike Place Market)》。ウォーターフロントに100年以上前からある、シアトルの食の豊かさを象徴する公共市場です。
1907年に設立されたこのマーケットは、全米でも最も古い公共市場。10人程度のファーマーたちが農作物を満載したワゴンをこの場所に運び販売をしたのが始まりで、その中には日系人の農家が多かったそう。日系農民が始めたマーケットともいわれています。第二次世界大戦前は店子の約2/3が日系人農家でしたが、戦中には敵国人として強制退去させられた悲しい歴史もあります。マーケットの正面玄関の天井近くには日系人とマーケットとの歩みを描いた切り絵アートが飾られ、日系人とマーケットとの歴史を記録しています。
現在では、ピュージェット湾沿いに広がる9エーカー(約3万7000平方キロメートル)という広大な土地に建物が連なり、220以上のショップやレストランなどがひしめき合う巨大マーケットに成長。シアトルのアイコンになっています。
売り場から思い切り投げた魚をレジの相方がキャッチするのが人気の魚屋や、季節の花で埋もれている美しい花屋、ワシントン州各地のバラエティ豊富な野菜が並ぶ八百屋など、見ているだけで楽しいショップがずらりと並び飽きることがありません。レストランはもちろん、軽食を提供するキッチンカーや、ワインバー、パブ、クラフトビール屋などもたくさんあり、1日中いられる大変魅力的な場所です。
パイク・プレイス・マーケット(Pike Place Market)
https://www.pikeplacemarket.org
《パイク・プレイス・マーケット》に行ったらぜひ体験して欲しいのが、マーケットの中心部にある《アトリウム・キッチン・アット・パイク・プレイス・マーケット(Atrium kitchen at Pike Place Market)》。ここは、シェフのトレイシー・カルデロンさんが所有・運営する料理教室です。
いくつかあるコースの中でもおすすめは、トレイシーさんと《パイク・プレイス・マーケット》を歩き、試食しながら食材を調達し、それを持って帰って料理する“マーケット・トゥ・テーブル・ツァー”というクラス。店や食材の詳細な解説を聞きながらの市場巡りが非常に面白く、市場の理解を深めてくれます。
食材を持ち帰ったら、キッチンで料理。トレイシーさんの丁寧な説明と絶妙なサポートで、料理が得意ではない人でも楽しい時間が過ごせます。完成したらお楽しみの試食会。ワシントン産のワインと一緒に食材仕入れから完成まで自分が携わった料理を味わうのは、なかなか体験できない格別なひとときです。
アトリウム・キッチン・アット・パイク・プレイス・マーケット
(Atrium kitchen at Pike Place Market)
https://www.atriumkitchenpikeplace.com
《パイク・プレイス・マーケット》は周辺にも魅力的なお店がたくさんあります。中でもアイコニックなのが、1971年にオープンしたスターバックスの世界第1号店。現在のロゴとは異なる、開業時のデザインである茶色のロゴが目を引きます。
開業当初は、ドリンク類などはなくコーヒー豆だけを販売していたそう。看板に書かれた店名も《スターバックス・コーヒー・ティー・スパイス(Starbucks Coffee Tea Spices)》になっていて、1号店の歴史を感じます。
当時の姿そのままの店内は、焙煎会社の面影が色濃く残る業務用な雰囲気。店内は狭く、聖地を目指して来た世界中のスタバファンで溢れかえっています。ラテやコールドドリンクももちろん人気ですが、1号店に来たからには、ここでしか飲めない“パイク・プレイス”という名前のコーヒーを試してみるのがおすすめです。
1号店オリジナルのマグカップや、開店当時のスタッフエプロンを着たテディベアなどファンにはたまらないお土産も豊富。ここでしか買えない“パイクプレイス スペシャルリザーブ”というコーヒー豆の購入もお忘れなく。
スターバックス1号店の並びにある、《ヘレニカ・カルチャード・クリーマリー(Hellenika Cultured Creamery)》も、《パイク・プレイス・マーケット》に来たら立ち寄りたい店のひとつ。ギリシャ系オーストラリア人のアポストロプロス兄弟が経営するホームメードのフローズンヨーグルトショップです。
ギリシャヨーグルトをたっぷりと使って作られるジェラートはクリーミーで食べやすくすっきりとした味わい。12種類あるフレーバーは日替わりですが、マリオンベリーやウベ(紫山芋)などオリジナリティあふれる味が並びます。マーケット探索で疲れた体を癒してくれるジェラートです。
ヘレニカ・カルチャード・クリーマリー(Hellenika Cultured Creamery)
https://www.hellenika.us
最も人気のある景勝地スノコルミー滝でマイナスイオンをたっぷり浴びてリフレッシュ
シアトル中心部から車で約40分。カスケード山脈のスノコルミー渓谷にある《スノコルミー滝(Snoqualmie Falls)》は、人気テレビ番組“ツインピークス”のオープニングに登場したことで世界的に有名になった滝。毎年150万人以上の観光客が訪れる、ワシントン州随一の景勝地です。滝の一番上にある展望台からは、268フィート(約82m)の高さから轟音を立て落ちる滝の雄大な姿が至近距離で見ることができ迫力満点。霧に漂う水飛沫が心地よく、いつまでも眺めていたくなる景観です。
滝がある森林にはハイキングトレイルが整備され、滝壺近くまで歩いていくことができます。滝の上から滝壺までは往復1.4マイル(2.25km)。軽装でも気軽に歩ける、気持ちの良いハイキングコースになっています。滝のマイナスイオンと森林のフィトンチッドをたっぷり深呼吸しながらのハイキングは、とても心地よくて爽快。滝から続くスノコルミー川のせせらぎも疲れを癒してくれます。
スノコルミー滝を見下ろす位置にある《サリッシュ・ロッジ&スパ(Salish Lodge&Spa)》は、2019年にスノコルミー滝とその周辺エリアの約45エーカーを買収したスノコルミー族が所有する高級ホテルです。客室、レストラン、スパ、ギフトショップがありますが、今回体験したのはスパのエスティシャンが教える、ボディスクラブ作り。
ローズマリーやラベンダー、フランキンセンスなど自然由来100%のエッセンシャルオイルと、オーガニックハニー、グレープシードオイル、シーソルトを混ぜて、自分だけのヒーリングスクラブを作ります。ハーブやエッセンシャルオイルが精神と肌に及ぼす効用の解説を聞きながら、好みのオイルを選んでひたすら混ぜ続ける作業は、良い香りに包まれながら没頭できる楽しい時間です。
サリッシュ・ロッジ&スパ(Salish Lodge&Spa)
https://www.salishlodge.com
様々なスポーツが盛んなシアトルで、この地発祥のピックルボールを体験
最近日本でも大会が開かれ、知られ始めているピックルボールは、シアトルのベインブリッジ島が発祥。ベインブリッジ島在住のジョエル・プリチャード、ビル・ベル、バーニー・マッカラム各氏が1965年に、裏庭で簡単に楽しめるゲームとして考案したのが始まりです。テニスコートの1/3、バトミントンコートとほぼ同じ広さのコートの中で、プラスチック製の穴あきボールを、パドルというラケットで打ち合うスポーツです。
ファウンダーズ・コートという名前の公共のコートがあるベインブリッジ島へは、港のターミナルからフェリーに乗って行きます。フェリーが海上に出ると、シアトルの街並みが一望できて感動的。心地よい海風に吹かれながら約35分の船旅を楽しみます。
ピックルボールのルールはテニスに似ていますが、いくつかの相違点もあります。コーチにルールを教わりながら実践。卓球のラケットに似たパドルや穴あきボールは慣れないうちは扱いにくいけれど、何回か練習するとコツが掴めてきます。緩すぎず激しすぎずの運動量が、子供からシニアまで楽しめるスポーツと言われる所以。アメリカでの競技人口は40万人を超え、2021年にはプロピックルボール協会(PPA)が設立されました。メジャーリーグ(MLP)のツァー大会など、賞金付きの大会も開催されています。
ベインブリッジ島・ピックルボール(Bainbridge Island Pickleball)
https://www.bainbridge-pickleball.org
シアトルは、野球のシアトル・マリナーズをはじめ、サッカー、バスケット、アメリカンフットボールなど、ここに本拠地を置くチームがたくさんあり、各チームに熱心なサポーターが多いことで知られています。その中で最近盛り上がっているのが、2021年にナショナルホッケーリーグ(NHL)に加わった“シアトル・クラーケン”。クライメット・プレッジ・アリーナを本拠地とする、地元のプロアイスホッケーチームです。
NHLのレギュラーシーズンは10月から翌4月。アイスホッケーの試合を生で観れば、そのスピード感と迫力の凄さに圧倒されて、ルールがよく分からなくてもすぐにファンになってしまいます。大きな選手たちが真剣にパックを追いぶつかり合う音が響き渡るゲームはまさに氷上の格闘技。荒いボディコンタクトやファイティングと呼ばれる殴り合い(ルールあり)があるたびに、会場は大盛り上がりです。シアトル・クラーケンがゴールを決めれば会場のボルテージは最高潮。ファンたちと一緒に大声で声援を送っていると、日頃のストレスも吹き飛ぶことは間違いありません。アイスホッケーの試合は見たことがないという人にこそ、シーズン中にシアトルに行ったらぜひ体験して欲しいスポーツです。
シアトル・クラーケン(Seattle Kraken)
https://www.nhl.com/kraken/
クライメット・プレッジ・アリーナ(Climate Pledge Arena)
https://climatepledgearena.com
協力
シアトル観光局
https://visitseattle.org
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