お笑い芸人・ヒロシさんが、初めて猫を迎え入れて感じた“大きな変化”
撮影・天日恵美子 文・黒澤 彩
お笑い芸人 ヒロシさん(53歳)×あっちゃん(2歳)、櫻(1歳)
芸人のヒロシさんは2匹の猫を飼い始めてから、孤独なイメージを貫いていたキャラが少し変わってきたことを自覚している。
「ナレーションの仕事で、『かわいいワンちゃん』なんて台詞があると、嫌だな、言いたくないなと思っていたんですよ。『犬』でいいだろうと。それが今では平気になりました。なんならハイトーンボイスで『ワンちゃん、ネコちゃん(語尾にハートマーク付き)』って言えます」
もともと犬や猫を飼うことに興味はあったけれど、若い頃は経済的に厳しく、余裕ができてからも、ペットが亡くなってしまうのに耐えられるか、迷っていたそう。前年に49歳で家を買ったことが一つのきっかけになった。
「内装を手がけてくれた友人が猫を4匹飼っていて、うちで朝まで飲みながら『猫はいいぞ』と勧めてくるんです。その翌日のロケでたまたま見てもらった占い師から、『あなた、猫を飼いますよ』と言われて……。あまり占いを信じないほうですけど、昨日の今日だったので驚きましたよ」
猫を飼うなら保護猫と決めていた。福岡の河原に捨てられていたというオスのあっちゃんは、初対面でも嫌がらず抱かせてくれて、「飼う」と即決。あまりのかわいさで、いろいろな懸念など吹き飛んでしまったという。
2匹と1人。このバランスがちょうどいいのかも
「あっちゃんを飼い始めて、ふと思ったんです。待てよ、あっちゃんは男だから女がいたほうがいいのかな。一生僕と2人暮らしなんて不憫だな、と」
そうしてメスの保護猫、櫻も加わって、3人の生活がスタート。2匹の相性を心配したけれど、あっちゃんが櫻にとても優しく、そんな健気な姿もまたヒロシさんを感動させた。
「櫻が来てすぐに、あっちゃんがお気に入りだったおもちゃを櫻に譲ってあげていたんです。飯も、僕の膝の上も、ぜんぶ譲ってあげる。なんて優しい男なんだと、あらためてあっちゃんの性格のよさがわかりました。優しいし、賢い。僕が言っていることもちゃんとわかっています。犬なんじゃないかと思うくらい賢いです」
仕事のときは「行ってくるね、◯時に帰るよ」と言って出かけることにしていて、出張や旅のときにも、「今回は長いよ」と期間を伝えておく。ヒロシさんが不在のあいだは猫好きの後輩が家に泊まってくれるそうで、もし自分になにかあったとしても、身近な誰かが2匹を引き受けてくれるだろうという安心感もある。と言いつつ、久しぶりに再会すると思いきり甘えてくるのが、たまらない。
「10日間ほど海外にいて帰ったら、あっちゃんがもう甘えて甘えて。やっぱり僕じゃないとダメなんだなと、にやにやしちゃいますね」
2匹に話しかけていたら一日が終わってしまう。一生独身と決めて生きてきたものの、以前は寂しさを感じることもあったそうだが、猫たちが来てからはそれもなくなった。
「できることなら彼らの言葉を理解したい。にゃーにゃーって一生懸命に言ってくるんだけど、腹が減ったのか、遊びたいのか、何を求めているのかわからないのがもどかしいです」
もしも会話できるようになったら?
「どう、楽しい?って、聞いてみたいかな。保護されなければ今はなかったかもしれない、儚い命じゃないですか。それが偶然、僕のところに来てくれたんだから、せめて『うわ、楽しい!』とか『この飯うまいな』とか思えて、毎日が幸せであってほしいです」
『クロワッサン』1140号より
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