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応募総数300首超え!「クロワッサン」誌上短歌コンテスト講評

お題は歌人、小説家の加藤千恵さんが出してくれた「料理名の入った短歌」。本誌WEBで約2週間投稿を募集したところ、20代から70代まで幅広い世代から多数の歌が寄せられました。

撮影・幸喜ひかり イラストレーション・浅妻健司 文・一寸木芳枝

お題「料理名の入った短歌」

応募総数300首超え!「クロワッサン」誌上短歌コンテスト講評

【A】「パラパラな炒飯みたくいつまでも友でいるぼくとあなただった」

箭田儀一

【B】「何もかもあんかけにするあの家に守られていたんだって気づいた」

深川泳

【C】「肉じゃがを遠い国でも作ってね どんな煮崩れ方か教えて」

土屋サヤカ

応募総数300首超え!「クロワッサン」誌上短歌コンテスト講評

【D】「幸福はあった たとえば病む君におかゆを作ってあげられたこと」

石綱青衣

応募総数300首超え!「クロワッサン」誌上短歌コンテスト講評

【E】「ペガサスの馬刺しを食べたあの日から誰が処女だかわかってしまう」

石川真琴

選者・加藤千恵さん(以下、加藤) 料理は人生の中で多くの場面に出てくるものだと思ってお題に設定しましたが、ここまでバリエーションに富んだ歌に出合えるとは想像していませんでした。

選者・岡本雄矢さん(以下、岡本) 僕はこれだけたくさんの中から選ぶのが初めて。読むだけで楽しかったです(笑)。

読者が100人いたら100通りの読み方があるから面白い

岡本 僕と加藤さん、ふたりの選出が被ったのはA〜Cの3首でした。

加藤 こうして見てみると、どれもその料理でなければ成立しない構成になっていますね。

たとえばAですが、“パラパラしていておいしいもの”って、炒飯以外になかなかない。でもだからこそ、2人の関係性の表現にうまく投影されている。私は友だち以上恋人未満の関係性を想像しました。

岡本 僕は男同士、昔からの地元の友だちを想像しました。見事に違いますね(笑)。でもそれでいいんですよね。

関係性という点では、Cはより想像の余白が大きい。一緒に食べたのか、一緒に作ったのか、レシピを教えてもらったのか。

加藤 もう会わない相手なのかもしれないし、また会う相手なのかもしれない。あとがすごいのは、後半の「煮崩れ方」っていうフレーズですよね。

岡本 読む時って、なんとなくオチを想像して下の句を読みますけど、この「煮崩れ方」は想定外でした。そこに着地するんだ、っていう面白さがある。

加藤 唯一、あんかけでもうどんなのか、焼きそばなのか、ご飯なのか、具体的に触れないのに、情景が浮かぶのがB

岡本 初めての一人暮らしで、なんでもあんかけにする実家を思い出したんでしょうか。味ではなく、愛情に守られていたことをあんかけで表現したのが素敵です。

ちなみに僕は、この歌を読んで、母親が何の料理にでもしめじを入れていたことを思い出しました(笑)。

加藤 ハハハ。うちは息子があんかけが大好きなので、家でしょっちゅう作ります。ただ、片栗粉がダマで残っちゃうこともよくあって(笑)。

でも家のあんかけってそういうものじゃない?おいしいけど、ちょっと垢抜けないというか。それが実家のイメージと重なる点が見事ですよね。家族仲が良かったことも感じ取れますし。まさに料理名ならではの魅力が伝わる歌です。

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