応募総数300首超え!「クロワッサン」誌上短歌コンテスト講評
お題は歌人、小説家の加藤千恵さんが出してくれた「料理名の入った短歌」。本誌WEBで約2週間投稿を募集したところ、20代から70代まで幅広い世代から多数の歌が寄せられました。
撮影・幸喜ひかり イラストレーション・浅妻健司 文・一寸木芳枝
読み手の想像の上をいく語順の妙が光る作品に目が留まる
岡本 それぞれに選出したのがDとC。加藤さんがDを選ばれた理由は?
加藤 おかゆを作っていた時は、幸福を実感していたわけではないと思うんです。相手が病んでいるわけですし。でも時間が過ぎ去ってみると、その瞬間がすごく幸せだったと気づく。幸せって本当にそういうものじゃないですか。日常のささやかな日々こそ、幸せとして思い出すというか。
岡本 おかゆっていうのがツボです。
加藤 岡本さんがEを選んだ理由は?
岡本 まず「ペガサスの馬刺し」っていう料理名につかまれました。何だそれ!?って(笑)。で、それを食べたことによって、ある種の能力が身につくという発想も面白くて。
日常生活に密着した歌が多い中で、唯一のファンタジー作品だったことも選んだ理由です。芸人の性で、M-1グランプリみたいに100組の中で目を引くためにはある程度目立つ必要があるので、そういう発想が染みついている(笑)。
加藤 なるほど。あと読んだ時に目に留まるのは、語順の妙が光る作品が多いかもしれないですね。
Dも「幸福はあった」っていう出だしだったから惹かれたわけで、これが逆だったら留まらなかったかもしれない。でも逆にCのように、後半に「煮崩れ方」が出てきたことが驚きにつながることもある。短歌は言葉の順番を入れ替えて遊んでみるのも面白いと思います。
せっかくなので……加藤さん、岡本さんにも詠んでもらいました!
加藤さん
「執行中 ビーフシチューを見るたびにあなたのことを思い出す刑」
「最初の“執行中”の3文字にもう、やられました(笑)。誰かとの思い出と料理がリンクしてる。切なさにキュンときます」(岡本さん)
岡本さん
「サムギョプサル焦げていくのをただ見てる わかっててできないことばっか」
「昨日初めて食べて、それをすぐ歌にするのがさすが。わかっているはずなのにできないことって、確かに多いですよね」(加藤さん)
『クロワッサン』1136号より
02 / 02
広告