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『世界の果てまで行って喰う—地球三周の自転車旅—』著者・石田ゆうすけさんインタビュー「旅を思い出すのに食は重要なキーワード」

撮影・園山友基 文・中條裕子

石田ゆうすけ(いしだ・ゆうすけ)さん 1969年、和歌山県生まれ。旅行作家。自転車、アウトドア雑誌等への連載や寄稿ほか、食の記事も多数手がける。世界一周の旅を綴った『行かずに死ねるか!ー世界9万5000km 自転車ひとり旅』など、著書多数。
石田ゆうすけ(いしだ・ゆうすけ)さん 1969年、和歌山県生まれ。旅行作家。自転車、アウトドア雑誌等への連載や寄稿ほか、食の記事も多数手がける。世界一周の旅を綴った『行かずに死ねるか!ー世界9万5000km 自転車ひとり旅』など、著書多数。

26歳でサラリーマンを辞め、自転車で約7年半かけて世界を回り、その後も海外を走り続けている石田ゆうすけさん。旅の間に体験した、食と人との出会いを綴ったのが本書。ここには、私たちが日頃この国で暮らしている中で決して味わうことのできない、「初めまして」がたっぷり詰まっている。

「自転車旅で世界を回るのは当初3年半の予定でした。でも、せっかく自由な時間を手に入れたのだからと思い、ゆっくりいたいところに逗留しながら旅を続けたら7年半が過ぎていた。旅ではいろいろな人たちに出会えるのがいいですね。何より食事を一緒にする体験が大きい。初めて出会った人がよく家に泊めてくれたり。言葉もろくに通じないけど、一緒にごはんを食べて現地語で『うまい!』と言うと、すごく喜んでくれるんです」

アラスカからアメリカ大陸を縦断し、アフリカへと渡り、そこからヨーロッパ、中東からアジアを巡り、うっとりするような幸せごはんの一方で、これまで出合ったことのないテリブルごはんだったり、さまざまな食に出合うのだが……。読み進めるうち、よくぞここまでリアルに当時食べたものの記憶を辿れるものだと感心するばかり。

「食べたものは全部書き留めてましたね。食べること、書くことが大好きだったので」と、石田さん。幸せごはんのエピソードなどは、文字を目で追っているだけで自分も味わってみたくなる描写が続く。

「それがこの本を書いた目的のひとつですね。読んでいる人が、活字を追っている意識をなくすくらい、匂いだったり食感だったりを、同じように追体験して食べている感覚に浸ってもらえるようにと思って。いろいろ考えて書いてます」

過去の旅のぼんやりした記憶が、食を通して立体的によみがえる

旅の間、自転車に乗っている時間は何を考えていたのかと問いかけてみると。「ほとんど食べ物のことばかり考えていました」と、石田さんは笑う。

「特に旅の終盤、中国に入ってからは取り憑かれてましたね、食欲に。次の街ついたら何食べようかな、今日何作るかな、とかそればかり。走っていると純粋な獣になっていく感覚があって余計なものが削がれていく。それが気持ちよくて。サメみたいなもので食欲だけになる。それだけ残って、毎日8時間くらい走っていたかなあ。景色見ながらゆっくり漕ぐので、きついと思うことなく走っていました」

そして、今回の本を書くにあたり、改めて食の記憶のすごさに気づいたのだという。

「食べ物のことを書くことによって、ぼんやりしていた過去の旅の記憶、その時の情景がより立体的になってくるんです。今でも思い出しますが、アルゼンチンのパンパ平原を越えるとき、水用のボトルにワインを入れて飲んでいて。あの時の情景もくっきり覚えてます。その土地の食べ物、飲み物を味わいながら走ると、殺風景な荒野が色づいてくる。地球って美しいと思えるんです」

アルゼンチンの絶品牛肉から世界各地のブヨブヨパスタまで。天国メシと地獄メシを各国で味わい巡る胃袋旅行記。 新潮社 1,760円
アルゼンチンの絶品牛肉から世界各地のブヨブヨパスタまで。天国メシと地獄メシを各国で味わい巡る胃袋旅行記。 新潮社 1,760円

『クロワッサン』1134号より

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