家事の負担が減り、心が軽やかにーープロに聞く“小さく暮らすためのものの手放し方”
撮影・黒川ひろみ イラストレーション・小泉理恵 文・嶌 陽子
「小さな家に住み替える場合、通常のものの減らし方とは意識を変える必要があります」と話す石阪京子さん。
「家具などの大きなものも手放す必要があるため、迷いも生じやすい。だからこそ、ものを減らす目的やメリットを明確にしておくことが大切です」
着実にものを減らしていくうえで大切なのは「空間にはお金や時間がかかっている」と意識すること。逆に、ものを手放して住空間を小さくすればお金や自由が手に入る。「そう考えるとものを減らすモチベーションも上がるはず」と石阪さんは言う。
ものを減らす精神的・身体的なハードルは年齢とともに上がっていくもの。おすすめのタイミングは?
「50代後半〜60代のまだ心身とも元気で、かつ仕事のリタイア時期が見えてきた頃がいいでしょう。この先どんな暮らしをしたいかを明確にしたうえで、ぜひ取り組んでみてください」
ステップ1. 空間にはお金と時間がかかっていることを認識する
家が広いとそれだけ家賃や維持費、光熱費などがかかるうえ、掃除やものの管理、移動などの時間も奪われる。「ずっと使っていないものを置いている空間にも、コストがかかっているのです」。反対にものを減らして空間を小さくすると、その分のお金や時間の自由が手に入る。このことを意識すれば、ものを減らす意欲も高まるはず。
ステップ2. どんな家に住みたいかを明確にする
「ゴールが見えないと、何をどれだけ減らせばいいのかが分かりません。自分がどんな暮らしをしたいのか、そのためにはどれくらいの広さのどんな間取りの家に住み替えたいのかを考えましょう」。趣味の部屋がほしい、ゆったりくつろげるリビングがほしいなど、具体的に考えることで減らす量や優先して残すものが見えてくる。
ステップ3. いる・いらないを判断する
効率よく空間を確保するために、以下のアイテムの順に要・不要を判断し、ものを減らしていくといい。
大きいもの、重いもの
子どもが独立しても使い続けている大きなテーブルやソファ、高い棚など、体力を使うもの、倒れると危険なものは処分を検討しよう。
存在を忘れていたもの
圧力鍋やミキサーなどの調理器具や行楽アイテムなど、忘れていたものこそ案外場所を取っている。あらためて向き合ってみよう。
来客用のもの
来客も以前より減っていくことを考え、専用の食器や布団は必要なし。布団はいざとなったらレンタルでOK。これからは自分中心の家に。
身につけるもの
今の自分に似合わない昔のワンピースや身につけると疲れる重いコートやバッグなどは処分。古着屋やメルカリなどで売るという手も。
紙もの
契約書や保証書など、紙としての存在が重要なもの以外はデータ化。取扱説明書はネットでも見られる。本は電子書籍の利用も考えて。
思い出のもの
クリスマスツリーや雛人形、子どもが大事にしていたぬいぐるみ、趣味のコレクションなど。「自分がこの世を去るときに棺桶に入れてほしいものだけ残す」と考えると判断しやすい。
住み替える場合、今の家はどうすればいい?
持ち家の今後の選択肢として考えられるのは「建て替え」「減築」「貸す」「売る」。ただし建て替えや減築は出費がかさむリスクがあるので、おすすめは「貸す」か「売る」。それぞれメリット・デメリットがあるので専門家に相談しつつ決めよう。どちらも不用品の撤去や書類の用意など、準備に1〜2カ月かかる。貸す場合はさらにリフォームにもう1〜2カ月かかることも。余裕を持って計画的に進めたい。
貸す場合
家の所有権を持ち続けながら家賃収入を得られる点が大きなポイント。周辺の環境がよい家や定期的にメンテナンスをしているマンションなどは貸すのに向いている。ただし、貸し出す前にリフォームが必要になる場合もあること、維持管理コストがかかることも念頭に入れておこう。物件の管理や借り手探しを代行する不動産業者は、管理費やサービス内容などを比較して慎重に選んで。
・家賃収入が得られる
・家の所有権を持ち続けられる
・維持管理コストがかかる
売る場合
アクセスが不便な立地の家や築年数の古い家、新たな住まいから遠方にある家などは、「貸す」より「売る」がおすすめ。一度に大きな収入を得られるほか、固定資産税や修繕費、管理費などの維持費がかからなくなり、管理の手間からも解放される。
一方で不動産という大きな資産を失うことにも。家は財産の中でも大きなものなので、信頼できる専門家に相談しながらしっかり考えたい。
・一括で現金収入が得られる
・管理の手間やコストがかからない
・資産として活用できない
『クロワッサン』1126号より
広告