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三東サイさんと行く、出雲大社

全国に約8万社あるといわれる神社の代表的な存在である、出雲大社(いづもおおやしろ)。人々の祈りの歴史を感じる境内を訪れ、自分も参拝することで得られる心の安らぎ、そして何かに見守られているような感覚に、何度でも足を運びたくなるはずだ。

撮影・三東サイ  文・大池明日香

【出雲大社】

日本神話の神々の地を訪れ、太古の祈りに思いを馳せる。

八雲立つと日本最古の和歌に詠まれ、国の創生を描いた神話の地として守り継がれる出雲。その壮大な物語の舞台となるのが、かつて杵築大社(きづきのおおやしろ)と呼ばれ、最も歴史の長い神社のひとつとされる出雲大社(いづもおおやしろ)である。鳥居をくぐり、松の参道の先にある境内に足を踏み入れると、森厳な空気に心が引き締まる。共に訪れたのは、島根出身で神社の神職も務めていた写真家の三東サイさんだ。

出雲大社の境内。左が1963年に新築された戦後最大の木造神社建築で、参拝者の御祈祷が行われる拝殿。右奥に見えるのが本殿。
出雲大社の境内。左が1963年に新築された戦後最大の木造神社建築で、参拝者の御祈祷が行われる拝殿。右奥に見えるのが本殿。

「特別な思いを持って参拝する人も多いですが、自分にとっては空気や水のように当たり前にそこにある存在。何でもない一本の木が、いつしか御神木として崇拝されるように、神社というのは自然の一部なんですよね。ただここに来て、ありがとうと感謝する。島根へ来ると自ずと足が赴く場所です」

日本最古の神社建築様式である「大社造り」。正面から見て、屋根の形が本を開いて伏せたような、八の字の曲線になっているのが特徴。屋根は檜皮(ひわだ)葺き。
日本最古の神社建築様式である「大社造り」。正面から見て、屋根の形が本を開いて伏せたような、八の字の曲線になっているのが特徴。屋根は檜皮(ひわだ)葺き。

国づくりを成し遂げ、人や仕事などあらゆる縁を結ぶとされる大国主大神(おおくにぬしのおおかみ)を本殿に祀るここは、朝から多くの参拝客で賑わっている。出雲大社の作法の二礼四拍手一礼で御本殿を拝んだら、瑞垣に沿って右回りに歩を進め、大国主大神の父神とされる素戔嗚尊(すさのおのみこと)を祀る素鵞社(そがのやしろ)に拝礼してひと回り。雨が激しく打ち付けたかと思えば眩しいほど日が差すなど、目まぐるしく変わる朝の天気が、ここではどこか神秘的に思える。

本殿の裏手、八雲山の磐座(いわくら)の前にある素鵞社。ここに稲佐の浜の砂を納め、代わりに軒下の砂をいただいて帰る。
本殿の裏手、八雲山の磐座(いわくら)の前にある素鵞社。ここに稲佐の浜の砂を納め、代わりに軒下の砂をいただいて帰る。

「普段、仕事以外では、携帯でもあまり撮らないですが、出雲大社ではよく撮りますね。いつ来ても違う表情を捉えられる。ここに古代から脈々と続く物語があることも含めて、魅力的なモチーフだと感じています。昔ながらの聖地と呼ばれる場所には、レンズを通して見たとしても、有無を言わさず納得させられるような力がありますね」

上・本殿手前の地面の赤い丸は、大杉を3本括った柱の出土地点を示す印。1本が直径1.4メートルほどの太さ。左・境内の神祜殿(宝物殿)に展示される、かつての空中神殿を再現した模型。いかに壮大な建築だったかが体験できる。右・実際に発掘された杉の大木。
上・本殿手前の地面の赤い丸は、大杉を3本括った柱の出土地点を示す印。1本が直径1.4メートルほどの太さ。左・境内の神祜殿(宝物殿)に展示される、かつての空中神殿を再現した模型。いかに壮大な建築だったかが体験できる。右・実際に発掘された杉の大木。

出雲神話はもとよりだが、2000年に発見された大杉を束ねた柱の存在で、本殿がかつて高さ16丈(約48メートル)もの巨大な空中神殿だったという社伝も、三東さんを夢中にさせる。

有名な大注連縄(おおしめなわ)は、境内の西の神楽殿にある。しめ縄は長さ13.5メートル、重さ5.2トン。吊り木には樹齢150年のヒノキを使用。島根県の飯南町で4~8年ごとに制作される。
有名な大注連縄(おおしめなわ)は、境内の西の神楽殿にある。しめ縄は長さ13.5メートル、重さ5.2トン。吊り木には樹齢150年のヒノキを使用。島根県の飯南町で4~8年ごとに制作される。

「どうしてこの場所にそれだけの規模の建造物を、祈るためだけにつくったのか。ここに来て想像力を働かせながら、かつての人々に思いを馳せてみることで、生命の原点に立ち返ることができる。神さまってありがたいというけれど今ひとつピンとこない人も、長い間、特別に守られ続けてきた土地に来てみたら、不思議と“わからないけど、なんだかわかる”というのを体現できるんですよね。こういう自然の中だからこそ、感じられることがある」

本殿を囲む、東の瑞垣の風景。随所にある摂社を巡りながら一周。神座(しんざ)は西側を向いており、本殿西の遥拝所で拝礼すると神様と向き合える。
本殿を囲む、東の瑞垣の風景。随所にある摂社を巡りながら一周。神座(しんざ)は西側を向いており、本殿西の遥拝所で拝礼すると神様と向き合える。

神々が集う、祈りの始まりの出雲の地で、遥か昔の祖先とやり取りするかのような、壮大な時間を旅したい。

参道から二の鳥居と、遠くに一の鳥居を望む。鳥居は全部で4つあり、鉄筋コンクリート、鋼鉄、鉄、銅と、全て違う素材でできている。
参道から二の鳥居と、遠くに一の鳥居を望む。鳥居は全部で4つあり、鉄筋コンクリート、鋼鉄、鉄、銅と、全て違う素材でできている。

縁結びの神様として年間200万人以上の参拝客が訪れる。因幡の白うさぎ神話でも知られ、各所にうさぎの石像も。出雲縁結び空港から、レンタカーやタクシーなど、車で約30分。1日2本の直通空港連絡バス、または、JR出雲市駅経由のバスで約35分。JR出雲市駅から、神社最寄りの出雲大社連絡所バス停で降りて徒歩約1分。

●島根県出雲市大社町杵築東195
TEL.0853・53・3100(出雲大社社務所:8時30分~17時)

  • 三東サイ

    三東サイ さん (さんとう・さい)

    写真家

    東京と島根を拠点に、雑誌や広告などの分野で活躍。料理写真も数多く手掛ける。島根県で代々続く社家に生まれ、自身も神職資格を有する。

『クロワッサン』1132号より

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