西武鉄道とシンガポール政府観光局がコラボ。創作シンガポール料理を楽しむ、52席のみのレストラントレイン運行
写真・文 斎藤理子
素敵に洗練されたシンガポール料理を、緑あふれる車窓と共に楽しむ贅沢
「52席の至福」にはブランチコース(1万5000円)とディナーコース(1万8000円)がありますが、車窓からの景色を堪能したいならブランチコースがおすすめ。西武新宿駅を10時40分もしくは、池袋駅を11時02分に発車し、約2時間30分〜3時間ほどかけて西武秩父駅に到着します。ビルに埋まった都会から徐々に緑濃い森林景色へ変化していく車窓に旅行気分もどんどん盛り上がっていきます。
味覚も心も満たされる、旅するレストラン
メニューを考えるにあたりシンガポールを旅して、星付きレストランから庶民の屋台までのシンガポール料理を体験したという野田達也シェフ。「多種多様な人種と文化が混ざり合ったシンガポールはとてもエネルギッシュ。発見がいっぱいあり、常に新しいものを生み出す力があると感じました。料理の世界でも、いろいろなチャレンジを恐れずシンガポールにしかない新しい味を創り出す勢いがあり、とても刺激を受けました」。
その刺激とインスピレーションをもとに野田シェフが創り出すのは、フレンチや日本料理の技をベースに、シンガポール料理を再構築し昇華させた「52席の至福」でしか食べられない逸品の数々。ラクサをクリームコロッケに仕立てたり、チリクラブをフランにしたりと自由で大胆な発想が素晴らしく、それでいて味わえばしっかりシンガポール料理に着地する技量が見事です。
「秩父の食材を使ったり、食べられるのに捨てられてしまう食材を取り入れたりすることで、地域性やサステナビリティも意識しています。ここで食べる食事が何か良い循環につながればいいなと思いながら料理を作っています。食べて美味しいのはもちろん、心も満たすような料理が提供できれば嬉しいです」と野田シェフは語ります。
秩父の四季を表現した特別列車は4両編成、内装にも注目
「52席の至福」という企画は、西武鉄道とシンガポール政府観光局の、それぞれの思いが通じ合って生まれました。
それというのも、シンガポールの人々にとって、日本は最も人気のある海外渡航先のひとつ。しかし、西武鉄道は東京だけでなく沿線の代表的な観光地である秩父にも足を運んでもらいたいという願いをもっていました。そしてシンガポール政府観光局は、「52席の至福」で楽しむシンガポール料理をきっかけに、日本の人々にもシンガポールを訪れてほしいと考えました。
こうして、西武鉄道とシンガポール政府観光局は相互の観光誘致を目的に「52席の至福×シンガポール政府観光局」を実現させたのです。
電車の外装と内装デザインは、建築家の隈研吾氏によるもの。外装には、自然豊かな秩父の四季が描かれています。1号車は多目的スペース、3号車はライブキッチンで、レストランは2号車と4号車。2号車の天井には柿渋和紙、4号車の天井には西川材が使われるなど、沿線の民芸品や地産木材が取り入れられています。全体的に落ち着いた雰囲気の中でゆっくりと美味を楽しみながら、特別な時間を過ごせます。
運行スケジュールや予約は西武鉄道のウェブサイトで。旅行代金には、乗車チケット、西武線1日フリーきっぷ、コース料理代金、お土産、諸税が含まれています。2025年1〜3月期のディナーコースに乗車するとシンガポールのホテル宿泊券やスクート往復ペア航空券が当たる抽選会も。ディナーコースは夕方西武秩父駅発で、発車時刻は季節により変わります。